4島一括返還は空理空論

北方領土に関する日本の主張は、「サンフランシスコ講和条約」および「日ソ共同宣言」を遵守することに変わりはない。
以下、北方領土問題解決に向けた日ロの合意事項であり、かつ日本が遵守すべきことで、唯一無二の事実である。

<国後・択捉>は主権放棄 〜サンフランシスコ講和条約(1951)

日本政府は、国後島・択捉島の主権を放棄したと1951年のサンフランシスコ講和条約で認めている。この日本が独立を回復した条約で、千島列島と北緯50度以南の南樺太を放棄したが、これに関する政府答弁で以下のものがある。

○西村(熊)政府委員 條約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。(中略)
なお歯舞と色丹島が千島に含まれないことは、アメリカ外務当局も明言されました。
1951年10月19日、衆議院における西村熊雄外務省条約局長のサンフランシスコ講和条約で放棄した千島列島の定義に関する答弁

このように日本が放棄した千島列島には択捉・国後が含まれていると外務省の条約担当の最高責任者が明言していたのである。

<歯舞・色丹>は返還 〜日ソ共同宣言(1956)
他方で、歯舞・色丹を放棄していないというのは絶対的な事実である。これは講和会議においてダレス米国全権が、「歯舞、色丹諸島は千島列島でない」と演説しており、吉田茂日本全権も歯舞と色丹は絶対に日本の領土であると主張している。

そして、1956年10月19日に日本とソ連がモスクワで署名し、1956年12月12日に発効した日ソ共同宣言でも、日本とソ連の間で、日本への歯舞・色丹の引き渡しが約束されているのである。

ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

このように、<歯舞・色丹>は日本の領土、<択捉・国後>はロシア(旧ソビエト)の領土であることが国際的取り決めによって明確になっており、4島一括返還を主張することは、サンフランシスコ講和条約の反故を意味し、国際社会からの非難はまぬがれない。

「2島+α」と「日ロ共同経済活動」

「2島」=歯舞と色丹の返還
「+α」=国後・択捉での共同経済活動など日本に特別な地位を与える

「2島+α」においては、日ロの共同経済活動なくしては語れない。

共同経済活動の開始

2013年 4月 日露パートナーシップ共同声明
モスクワにおいて、安倍総理とプーチン大統領が会談し、日露パートナーシップ共同声明に採択しました。「声明」中では、
1 第二次世界大戦後67年を経て日露間で平和条約が締結されていない状態は異常であることで一致しました。
2 両首脳の議論に付すため、平和条約問題の双方に受入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化させるとの指示を自国の外務省に対し共同で与えることで合意しました。
出典元 内閣府「北方領土問題~今~ 2.返還交渉の経緯を整理します。」

日ロ双方が受け入れ可能な解決策を模索するのが「共同経済活動」である。受け入れ可能な解決策とはwin-winに導くためのものである。
日ロ共同経済活動は、「日ロ経済圏」へとつながり、日本経済や北海道経済の起爆剤にもなる。

「共同経済活動」については10月の安倍総理とプーチン大統領の会談でも取り上げられた。

北方四島での日本とロシアの共同経済活動について、日露両政府が来年開始を念頭に協議していることが分かった。この共同活動5項目のうち、観光と温室栽培については費用負担や事業形態の詳細を詰めていて、養殖分野も北海道根室市に関連施設が整備されることが決まったという。

飯田)観光や養殖、ハウス栽培以外にも風力発電、ゴミの少量化というところが検討されています。メールもいただいているのですが、“てっちゃん”さん、58歳会社員の方。「これって経済のためには両国にとって良いのかもしれませんが、領土問題が棚上げになって解決が遠のいてしまうのではないでしょうか?」と。

宮家)その懸念はわかります。ただ、これはロシアと日本の立場にかなり開きがあるので、領土問題が棚上げにならないような解決促進のために、それをつなごうということです。その意味ではナイストライなのですよ。ただし、これは昔からある考え方で、いままではロシアが拒否してきた。なぜかというと、日本はロシアが実効支配しているところに対して、ロシアの法律が適用されないことをやろうとしているわけです。
だけど日本が持っている島に、どこの国とは言わないけれど突然やって来て、「おたくの法律は無しで一緒にやろうよ」なんてふざけるなって話ですよね。そういうことをやっていると彼らは感じているのでしょう。ですから、大規模なことはなかなかできない。でもそうしないと棚上げになっちゃうから、そうならないように経済的な利点があることをやる。それを効果的にするのであれば、ロシアの法律を否定しなければならない。
このジレンマを抱えながら、我慢に我慢を重ねてここまで来たのです。それはそれなりに良かったと思いますが、その程度かと言う方もいるかもしれない。だけどこれ以上やるならロシアの抵抗が強くなって、逆に橋渡しができなくなります。
出典元 日露共同経済活動は北方領土問題解決への一歩

お互いの国としての立場を受け入れつつ、理解し合いながら突破口を探していくのが「共同経済活動」である。記事にあるように互いの主張ばかり言い合えば、門戸は閉じてしまう。

過去にロシアが解決した領土問題
ロシアが過去に解決した有名な領土問題として挙げられるのが、ダマンスキー島である。この島をめぐって、ロシアと中国は軍事衝突を引き起こしていた。

中ソ国境紛争(ちゅうそこっきょうふんそう、ロシア語: Пограничный конфликт на острове Даманский)は、中華人民共和国とソビエト連邦の国境問題により生じた紛争である。

1969年3月2日、15日にアムール川(中国語名は黒竜江)の支流ウスリー川の中州であるダマンスキー島(中国語名は珍宝島)の領有権を巡って大規模な軍事衝突が発生した(珍宝島事件、ちんぽうとうじけん、ダマンスキー島事件)。同年8月にも新疆ウイグル自治区で軍事衝突が起こり、中ソの全面戦争や核戦争にエスカレートする重大な危機に発展した。同じ共産党国家でありながら、かつて蜜月を誇った中国とソ連の対立が表面化した事件でもあった。

出典元 Wikipedia「中ソ国境紛争」

この紛争では両国一歩も引かない状況だったが、「フィフティ・フィフティ」精神で解決にいたったのである。

「フィフティ・フィフティ」精神
重要な点は、係争地をおよそ半分にわけるというハサンの決着は、たしかに強引かつ緊急避難的な対応であったにもかかわらず、それを生みだした「フィフティ・フィフティ」の精神そのものは、中ロ間で3500キロを越える河川国境にうかぶ島嶼の係争を解決するうえでも発揮されたことであろう。実際、中ロの国境画定の真の難問は、陸国境ではなく、河川国境であった。ほとんどその交渉の内実は明らかにされていないが、数千といわれる島嶼をどう中ロ間で配分するかの難問がそれである。筆者が入手した資料によれば、各河川の島嶼の配分は以下の通り(但し、2004年10月に最終解決した島嶼を除く)。

この島嶼配分の表向きの数字は中ロの国境交渉にかんする合理的で平等なイメージを提示する。だが、これは一種の数字のマジックでもある。河川国境において係争化した島嶼の多くは、長年、ロシアによって実効支配されてきた。それゆえ、この「平等に解決されたイメージ」はうわべだけのものに過ぎない。事実、ロシアは数百の島嶼を中国に引き渡したといわれている。にもかかわらず、「勝利を分けあう(win-win)」イメージは、中ロ国境問題に関する民族的感情や反発を慰撫するのにとても重要であった。要するに、ハサンで示されたアプローチの精神は、300ヘクタールに止まるものではなく、中ロ国境全体に当てはまる。
この「フイフティ・フィフティ」精神は、中ロの問題解決に「勝利を分けあう」イメージをもたらすだけではなく、結局のところ、難問の解決が最後は政治的な判断でなされたことを示唆している。河川国境の島嶼配分はよく「技術的に決められた」と説明されることが多いが、いくつかのケースでは「フィフティ・フィフティ」精神にのっとり、政治的な取引(島嶼の交換)によって解決されたと思われる。

出典元 中・ロ国境問題の最終決着に関する覚え書

これを北方領土問題に当てはめてみれば、4島返還は100対0で日本の勝ち。返還されないは0対100で日本の負け。
サンフランシスコ講和条約では国後・択捉を放棄している歴史を持つ日本。日ソ共同宣言で歯舞・色丹を平和条約締結後に返還することに合意していることを考えれば、2島返還が両国の折り合う案であり、それに日ロの「共同経済活動」を追加した案、それが「2島+α」である。

「共同経済活動」日本にとっての魅力は?
北方領土の地下資源
ロシアには軍事産業(航空機、防衛を含む)と穀物などの農産業以外これといって突出する産業がないことで、経済は資源に依存している側面がある。一方日本にとっては、石油や天然ガスなどの地下資源がある地域は、最大な魅力である。

近年、千島列島の開発に力を入れているロシアであるが、2003年に千島中部を探査した結果、石油・ガス田を確認している。

ロシア政府は北方領土を中心とする千島列島開発のため、二〇一五年までに総額百七十九億ルーブル(約七百二十億円)を投資することを盛り込んだ「クリール諸島社会経済発展計画」を閣議決定したが、この計画の中に、日本の北方領土周辺で石油・天然ガスの資源探査を行なう構想が含まれていることが分かった。 ロシア政府筋によれば、二〇〇三年に千島中部の大陸棚で実施した探査の結果、有望な石油・ガス田を確認できた。千島南部にも石油・ガス鉱脈があるとされ、探査を実施する方針だという。 ロシア天然資源省の専門家によれば、北方領土海域には数カ所に油田・ガス田が存在する可能性があり、埋蔵量は石油換算で三億六千万トンとの試算もある。これは、日本の消費量のほぼ一年分に匹敵する。

出典元 新潮社Foresight

2000年から2008年までのプーチン政権期では、世界的な石油価格の高騰による石油ガスの輸出収入の増加を背景に、ロシア経済はマクロ的には順調な成長を遂げた。この期間名目GDPは倍増して世界第22位から11位になり、実質GDP成長率は平均で7%(2000年: 10%、2001年: 5.7%、2002年: 4.9%、2003年: 7.3%、2004年: 7.2%、2005年: 6.5%、2006年: 7.7%、2007年: 8.1%、2008年: 5.6%)、購買力平価では世界6位となった。2007年にはロシアのGDPは1990年の数値を上回った、つまりソ連崩壊後の壊滅的な経済危機、つまり1998年の財政危機とこれに先立つ1990年代の不況を乗り切ったことを意味している。

出典元 Wikipedia「ロシアの経済」

ロシアの経済は石油などの地下資源により、壊滅的な危機を乗り越えてきた歴史がある。すなわちロシアにとっての地下資源は、日本にとっての自動車産業や電化製品と同等の経済的役割をしているということである。

中ロ国境問題で、解決されないとみなされていた領土問題を解決に導いた『「フィフティ・フィフティ」精神』は譲り合うことでなく、互いが理解し合い、どうすればwin-winにもっていくかが大事なのである。

日本になくてロシアにあるものが地下資源で、ロシアになくて日本にあるものが技術である。領土問題が平和的に導ければ、ロシアとはそういった経済でもパートナーとなり得る可能性が非常に高い。

こういった概況を総合的に見れば、4島一括返還がいかに一方的で空理空論かをご理解頂けただろうか。

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