水道民営化という名のフェイクニュース〜改正水道法の真実〜

昨年12月6日、改正水道法が成立した。

あまり知られていないことだが、改正水道法は、水道民営化ではない。水道法改正の必要性について、どれだけ多くの国民が知っているだろうか?

なぜ、改正が必要になったか。その真実を解説する。

●改正水道法に対する批判

改正水道法に関して、ネットやSNSの反応を見ると多くは批判的な声が目立つ。それは、水道法改正案の審議にあたり、メディアはいつもの通り、批判的な報道を行ったからである。しかも、ほとんどが「水道民営化」というフェイクニュースを報じ、それを反政権のノイジ―マイノリティが煽っているからである。これでは、賛成派が、声を出すにも出せない状況だ。

メディア各紙が、どのようなタイトルで報じたか紹介しよう。

朝日新聞「水道の民営化、失敗なら住民にツケ 安全や値段大丈夫?
毎日新聞「水道法改正 自治体に波紋 経費削減期待/値上げ懸念
共同通信「水道「民営化」法が衆院で成立
神戸新聞「水道事業の民営化、神戸市は「採用しない」 久元市長が表明

タイトルからして水道法改正案=「水道の民営化」であるように報じた。

各紙の記事を見ると、海外の失敗事例ばかりを紹介し、成功事例にはダンマリである。しかも、お得意の「懸念」というお決まりの言葉を武器に、「民営化」により水質の安全性、水道料金の高騰など、懸念材料ばかりを取り上げている。まるで水道法改正案=民間業者に丸投げというイメージで報じているのだ。

メディアが識者等の意見として取り上げるのは、法案に対して反対意見を持つ人物の意見や、反対する野党議員の意見ばかりだ。いかにも悪法だという認識を国民に持たせようとしている。

メディアは、水道法改正に結論ありきの反対の姿勢を明確にしている。

●水道法改正の背景

政府とて、必要のないものを、わざわざ変えるようなことはしない。何か合理的な理由があるから行うのだ。そこを議論しなければ何も始まらない。

安倍政権が水道法を改正したのは、現在の水道事業が一刻も早い改革の必要に迫られていたからである。水道事業が抱える課題として、以下の4点が挙げられる。

① 人口減少社会の到来
2060年の推計人口は、8,674万人。これは2010年と比べると、およそ3分の2に減少し、水道の顧客が大きく減少することを意味している。

図は平成29年度 第1回官民連携推進協議会(東京) H29. 8.21(月)「水道法改正に向けて」より

② 管路等の老朽化の進行・更新の遅れ
平成26年度の水道管路更新率0.74(全国平均)であり、全ての水道管路を更新するのに、約130年かかる見込みだ。

③ 自然災害による水道被害の多発
東日本大震災、平成27年9月関東・東北豪雨、平成28年1月西日本の寒波による被害、熊本地震など、 自然災害による水道被害が相次いでいる。しかも、これらの被災自治体は、元より、財政的な基盤が脆弱であり、そこに災害が直撃することで、さらに財政を悪化させている。これは短期的には水道インフラの再建、中期的には水道事業の維持すら困難にさせるものである。

④ 水道事業に携わる職員数の減少
それだけではない。自治体の水道事業にかかわる職員数は約30年前に比べて、3割強減少し、高齢化も進行している。

以上のとおり、水道事業は岐路に立たされている。人口減少・災害の影響・財政難が重なり、自治体のコスト維持能力は限界にきている。しかも、水道インフラは今も老朽化へ向けてまっしぐら。

このままでは、水道事業は維持できない。まさしく、命にかかわる問題だ。現在、水道事業を維持するために、自治体間の広域連携で対処する試みが全国的に行なわれ、26道府県で協議会等の組織が設置される等、多様な形態の連携について検討が行われているが、なかなか進んでいない状況だ。

この状況において、抜本的な打開策として浮上したのが水道法改正なのだ。水道法改正により、以下の措置が講じられることになる。

①関係者の責務の明確化
・国及び各自治体は、水道の基盤の強化に関する施策を策定し、推進又は実施する。
・都道府県は、水道事業者等の間の広域的な連携を推進するよう努める。
・水道事業者等は、その事業の基盤の強化に努めなければならない。
②広域連携の推進
・国は、広域連携の推進を含む水道の基盤を強化するための基本方針を定める。
・都道府県は、基本方針に基づき、関係市町村及び水道事業者等の同意を得て、水道基盤強化計画を定めることができる。
・都道府県は、広域連携を推進するため、関係市町村及び水道事業者等を構成員とする協議会を設けることができる。
③適切な資産管理の推進
・水道事業者等は、水道施設を良好な状態に保つように、維持及び修繕をしなければならない。
・水道事業者等は、水道施設を適切に管理するための水道施設台帳を作成し、保管しなければならない。
・水道事業者等は、長期的な観点から、水道施設の計画的な更新に努めなければならない。
・水道事業者等は、水道施設の更新に関する費用を含むその事業に係る収支の見通しを作成し、公表するよう努めなければならない。
④官民連携の推進
⑤指定給水装置工事事業者制の改善

これらを柱にして、水道事業の基盤強化を図り、立て直しを行うことが目的なのである。「民営化」が主眼なのではないことがよくわかる。どこにも「民営化」の文字はない

●「民営化」ではなく「官民連携(コンセッション)」

民営化とは、どこにも記されていないのだ。水道法改正が主張するのは「官民連携(コンセッション)」なのである。

水道事業の民営化と聞けば、まるで民間業者に丸投げという意味になってしまうが、官民連携であれば民間の協力を得るということになる。官民連携(コンセッション)方式については、下図の通りである。

水道施設などの所有は、あくまでも自治体などの公共の施設である。利用者へのサービスなどの運営は民間業者が行う。水道事業の全体方針の決定、全体管理は、民間業者ではなく、国や自治体が行うことに変わりはない。また、利用者との給水契約の内容の決定及び締結や、施設の新設・改修なども、コンセッションによる民間事業者は、実施不可能な範囲となる。

当然、企業が健全な運営を行っているかの監視も、自治体に義務付けられる。これは国もである。

実際、官民連携については、すでに協議会も行われていて、開催について厚生労働省はこのように発表している。

水道は、市民生活や産業活動等に欠くことのできない重要なインフラ事業です。
一方で、水道施設の老朽化の進行及び人口減少による料金収入の減少や職員数の減少など、水道分野を取り巻く環境が年々厳しさを増す中で、これらの課題に対して、事業経営の効率化や広域化の推進など地域の実情に応じた形態により、事業の運営基盤を強化することが不可欠となっております。
そのため、厚生労働省、経済産業省、(公社)日本水道協会及び(一社)日本工業用水協会が連携し、水道事業者と民間事業者との連携(マッチング)促進を目的とした「水道分野における官民連携推進協議会」を平成22年度から全国各地において開催しております
今年度も引き続き、以下のとおり開催を予定しています。具体的な開催案内については、開催日の約1ヶ月前に、厚生労働省ホームページ等でお知らせします。
是非とも多数の水道事業者及び民間事業者の参加をお待ちしております。

厚生労働省 「平成29年度 水道分野における官民連携推進協議会」の開催概要及び資料 より

このように、自治体だけでなく、厚生労働省や経済産業省も官民連携の枠組みにカッチリと組み込まれ、監督を行っているのである。国や自治体は、今後も、水道事業に関わっていくのであり、決して民間事業者に「丸投げ」するのではないことを、ご理解いただきたい。

●「コンセッション方式」の効果は、浜松市で86億円!

静岡県浜松市が下水道のコンセッション方式の導入を決定し、試算を発表した。(参考;浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業)

浜松市は、導入の経緯を、以下のように発表している。

対象施設はもともと静岡県の施設でしたが、平成28年度からは浜松市が所有し運営することになりました。市では、平成 25年度から運営方法について検討した結果、コスト削減等の効果の高い「コンセッション方式」を導入することになりました。

また、導入効果として、浜松市は20年間で86億円もの税金を軽減できると発表した。


しかも、浜松市は、民間業者が勝手に料金を変更することは将来においてもないとし、これからも適正な運営が行われるよう、しっかり監視をしていくと、市民に公表している。だが、マスメディアは、こうした事実を全く報じない。


このように水道事業を改善するべく制定された法律なのに、ネット上でも話題になっていない。「民営化」という虚構に対するフェイクニュースだけだ。それは、メディアの報道姿勢に全ての原因がある。

マスメディアが「官民連携」を「完全民営化」だと印象操作し、「今後の水道料金が民間により勝手に操作されるのではないか?」という報道をすれば、それを聞いた国民が不安に思うのは当然だ。だから、ネットの一部で「日本の水道が外資系企業に乗っ取られる」「企業が儲けに走り料金が高騰する」「水質が悪化する」という意見が出てしまうのである。

だが、自治体が全体方針の決定をして、民間業者の運営を監視するのだから、そのようなことが起こるはずもない。

まさに本来、メディアが果たすべき役割を、全く果たしていないことになる。政府は、参考資料に使用させてもらった「水道法改正に向けて」のように、公式にネット上でも、記者会見でも、報道各社へのプレスリリースでも発表している。それを国民に浸透させるのが、メディアの本来の役割だ。賛否はそれからだ。

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