安倍政権の働き方改革法案入門③「高プロ」「同一労働・同一賃金」

4月1日に施行された、働き方改革関連法案について、政治知新はこれまで、時間外労働年次有給休暇・フレックスタイム制について紹介させていただいた。

今までに紹介した改革内容は、労働者の健康と、有意義な時間の活用により生活にゆとりを持つことで、家庭や子育て、ゆくゆくは少子化対策につながるものであった。今回は、「高度プロフェッショナル制度」「同一労働・同一賃金の原則」について触れていく。

●「高度プロフェッショナル制度」の創設

高度プロフェッショナル制度とは、通称『高プロ』と呼ばれる。年収1075万円以上かつ、一定の専門知識を持った職種の労働者を対象に、本人の同意等を条件として、労働時間規制や割増賃金支払の対象外とする制度である。2019年4月1日から、企業規模を問わず適用開始された。

年収1075万円以上という年収要件は、厚生労働省によると「使用者から支払われると見込まれる賃金額が基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として、厚生労働省令で定める額以上であること」とし、基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として設定された。

すなわち、高プロ制度を導入した企業は、対象者に1075万円以上の年収を支払わなくてはいけないということだ。


上図が示す通り、給与は労働時間で換算されるのではなく、成果によって評価されるのが高度プロフェッショナル制度である。

厚生労働省では、以下のように発表している。

高度プロフェッショナル制度は、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

引用元 高度プロフェッショナル制度わかりやすい解説

高プロに対しては、様々なネガティブな意見がネットや野党を中心に錯綜した。

しかし、高度プロフェッショナル制度導入の流れには6つの段階があり、安易に適用できなくなっていることはあまり知られていない。

1.「労使委員会」を設置する
2.「労使委員会」で決議する
3.決議を労働基準監督署長に届け出る
4.対象労働者の同意を書面で得る
5.対象労働者を対象業務に就かせる
6.決議の有効期間の満了

高度プロフェッショナル制度を適用する業務には、金融商品の開発、金融ディーラー、アナリスト、コンサルタント、研究開発などが含まれる。しかし、例えばコンサルタント業務に従事するからと言って、無条件に高プロの対象になる訳ではない。

上記にあげたような段階を踏む必要がある。

しかも、一般労働者と違い、時間による拘束がない分、勤務時間の過剰な超過などがあれば、企業が対象となる労働者の健康状態を把握しなければならないと定められている。

また、労働基準法第41条の2第1項第4号により、対象労働者に年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を、企業は与えなければならない。

このように、時間で拘束するのが難しい職務を対象としたのが、高度プロフェッショナル制度であり、対象者には、それなりの報酬を提供しつつ、健康面の配慮も義務付けられたものである。

●「同一労働・同一賃金の原則」の適用=公平な待遇

これまでは、正規・非正規の不合理な賃金格差が存在し、作業内容が同じでも正規と非正規では労働賃金に差があった。だが、今回の施行により、この問題の解決が図られることになった。

改正のポイントは以下の3つ。

非正規社員とは、短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者のこと。厚生労働省は、この3つのポイントを以下のように説明している。

1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備

・短時間・有期雇用労働者に関する同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。
(有期雇用労働者を法の対象に含めることに伴い、題名を改正(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法
律」))
・有期雇用労働者について、正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇の確保を義務化
・派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化。
・また、これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備。

2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。

3.行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

・1の義務や2の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備。

引用元 同一労働同一賃金に関する改正の概要

このように、労働者間に賃金格差が生じないように、規定を設けて明確化し、たとえ格差が生じる場合であっても、企業が労働者に説明することを義務化するというものである。企業は、行政による助言・指導等や行政ADRの規定を整備しなくてはいけない。

ADR(裁判外紛争解決手続)とは、「訴訟手続によらず民事上の紛争を解決しようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続」とされており、仲裁手続、調停手続その他の手続がこれにあたります。 行政書士会が開設するADRセンターにおいて行う手続は、調停手続です。

引用元 ADR機関 | 日本行政書士会連合会

規定を設けて、労働者に説明するだけでは、労働者が企業に言いくるめられる恐れがある。不正がないように行政が介入して、非正規労働者の雇用条件を確保することが可能となった。

総務省の労働力調査によれば、2017年の正規の職員・従業員は3423万人、非正規の職員・従業員は2036 万人。 被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 37.3%と高水準となっている。

安倍政権は、働き方改革の一環として、最低賃金の引上げについても「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく」としている。

2036万人の非正規労働者の雇用条件が改善されれば、国民総所得(GNI)も必然的に増加する。

安倍総理は「成長戦略第3弾スピーチ」で、以下のように発言している。

この成長シナリオを実現できれば、一人あたりの国民総所得は、足元の縮小傾向を逆転し、最終的には、年3%を上回る伸びとなります。そして、10年後には、現在の水準から150万円以上増やすことができると考えています。
「停滞の20年」から「再生の10年」へ。
チャレンジ、オープン、イノベーション。そして、アクション。成長戦略によって、日本経済を、停滞から再生へと、大きく転換してまいります。

引用元 安倍総理 「成長戦略第3弾スピーチ」(内外情勢調査会)

一部では「妄言だ」という妄言も上がったが、非正規労働者の労働賃金が見直されれば、決して妄言ではない。


働くということは、そこに賃金が発生すること。今回の2例は、労働内容に対して賃金が伴っていなかったものに政府がメスを入れたものである。

今回の2例からは、働き方改革が、アベノミクスの成長戦略に沿ったものであり、賃金上昇にもつながるものであることがよくわかる。

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