知っておくべき「民事執行法改正案」の概要〜離婚後のトラブルの軽減〜

離婚した夫婦間における子供のトラブルは深刻だ。年間の離婚件数は20万件を超えるが、その半分以上は子供のいる夫婦のため、年間10万件を超える問題が起きていると言っても過言ではない。

特に、親権者ではない親が子供を一方的に連れ去ってしまう問題は深刻である。訴訟に発展したり、酷いケースの場合、連れ去ったまま本来の親権者が永久に子どもに会えなくなってしまう事例も多発している。

また、離婚する際に養育費を定めても、その養育費が支払われずに家庭が困窮する場合も頻発していることはよく知られている。


これらのトラブルを迅速に解決すべくまとめられたのが、民事執行法改正案だ。本法案は、現政権によって提出され、5月10日参議院で、全会一致で成立した。

民事執行法改正案とは

改正法案の項目は大きく6項目で、以下の通り。

第1 債務者財産の開示制度の実効性の向上
第2 不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策
第3 子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化
第4 債権執行事件の終了をめぐる規律の見直し
第5 差押禁止債権をめぐる規律の見直し
第6 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に
引用元 民事執行法制の見直しに関する要綱案より抜粋

今回ご紹介するのは、第1項と第3項である。

●子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化

まず、本法案によって新設された『子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化』の内容を見てみよう。

子どもを連れ戻すルールは、日本が2014年に加盟したハーグ条約に「強制執行」の手続きが定められている。強制執行は裁判所が引き渡しを命じた場合、家庭裁判所の執行官が代わりに子を保護する仕組みだ。

今回の改正案はこの手続きを迅速にする。引き渡しに応じない親に制裁金などを科して促しても応じないとみられる場合、一定期間を待たずに連れ戻しを認める。

保護する際、引き渡しを命じられた親が立ち会わなくても、申し立てた親がいればできるようにする規定もつくる。

制裁金などを科す「間接強制」の手続きを経なくても強制執行できるようになることから、子どもを連れ戻す手続きの実効性は高まるといえる。

引用元 子の連れ戻し迅速に、所在地特定で課題 法案が衆院通過

現行では、親権を失った親から、親権が認められた親に子どもを引き渡すための規定がなかった。また、同居する親が一緒にいる時に限って、裁判所の執行官が子どもを預かり、親権者に引き渡す運用になっていた。このため、同居中の親が抵抗した場合には対応が難しくなっていた。

事実上、子どもを先に連れ去った者が有利だったため、これがさらに子どもの「連れ去り」を助長するという悪循環を招いていた。

そこで、改正案では、引き渡しを命じられた側の親がその場にいない場合でも、裁判所の執行官が子どもを連れ出し、親権者に引き渡すことを可能にした。つまり、裁判所による奪還が容易になったのである。

●養育費と慰謝料支払いに関する規律の明確化

また、子どもの養育費や離婚による慰謝料の支払いに関する不払い問題も問題になっていた。

例えば、片方の親のDVや不倫によって離婚に至ったものの、定められた慰謝料や養育費が振り込まれなくなり、片親の家庭(主に子どもがいる家庭)が困窮するというケースがある。

しかし、今回の改正により、養育費と賠償金を受け取る側は、債務者の預金口座の差し押さえを裁判所に申し立てることができるようになった。これまでは、支払う義務を負う側が利用している金融機関の支店名まで探し出して、届け出なければならなかった。つまり、債権者が、自分で差し押さえるべき財産を「債権者自ら」探し出さねばならなかったのだ。

これは、身近に金融機関が少なかった時代の規定であり、ネット銀行などが普及した現在、相手の口座の金融機関支店名まで特定するのは困難だ。

そもそも、多くの場合、離婚した上に子供を引き取った家庭には時間もお金も余裕がない。

受け取るべき側に必要以上に重い負担を課し、事実上、差し押さえができない事態を招いている。

しかし、今回の改正により、裁判所が金融機関や公的機関に、支払う義務を負う側の預貯金や勤務先を照会し、回答を得ることができる新たな制度を設けることになった。

これによって差し押さえがしやすくなる。債権者側の泣き寝入りをなくすためには有効な手だてだ。

これにより、離婚した家庭は慰謝料や養育費をきちんと回収し、養育に充てることができるようになったのである。


共産党や立憲民主党ですら全会一致で賛成した「民事執行法改正案」とは、このように大きな意義をもっているのだ。

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