メディアが報じない「農地バンク法案」とは:アベノミクスの知られざる成長政策の一つ

アベノミクスといえば、金融政策や財政政策にメディアの報道は集中しがちである。

だが、実は農業改革もまた、「3本の矢」最後の成長政策の1つとして含まれている。しかし、この農業改革は未だ道半ば。海外よりも小規模がゆえの、競争力の低さや産業としてのスケールメリットがないなど、日本の農家は、「安全性」と「品質」以外の面では遅れをとっている。

そこで、政府は、企業の農業への新規参入や規模拡大を促す「農地バンク法案」を国会に提出。現在、参議院での審議が行われている。

この農地バンク法案もまた、極めて意義深い法案である。

●農地バンク法案可決

衆院農林水産委員会は18日、政府提出の農地中間管理機構(農地集積バンク)見直し法案を採決し、自民、公明、維新各党の賛成多数で可決した。立憲民主党は、機構の廃止や市町村段階での集積・集約化の推進を柱とした修正案を提出。同党と一部野党が賛成したが否決された。全会一致で採決した付帯決議には、市町村、農業委員会などへの十分な支援などが盛り込まれた。

引用元 農地バンク法案可決 付帯決議 市町村の活動支援 機構廃止は否決 衆院農水委

「農地バンク法案」の正式名は、「農地中間管理機構法等の改正案」である。この農地中間管理機構とは、平成26年度に全都道府県に設置された「信頼できる農地の中間的受け皿」であり、今回の法改正の肝は、この制度の問題点を改善する点にある。

●農地バンクとは

農地バンク制度とは、政府が2014年度から本格実施した農地の貸し借りを仲介する制度です。都道府県の第3セクターである「農地中間管理機構」が、不要となった農地を一度借り受け、必要とする人に転貸します。

貸し手となる農地の所有者は、農地の位置や面積などの情報を登録。農地を探している人は借受希望者として登録することで、農地中間管理機構が具体的な条件を調整し、利用計画を作成して賃借契約が成立する仕組みです。

引用元 知ってる?農業キーワード~農地バンク~

農地バンク制度とは、以下のような場合に農地を円滑に貸し借りできるようにするものだ。
・ 農業からリタイアする農家が、自分の農地を貸したいとき
・ 分散している農地を、お互いに利用権を交換して集積したいとき
・ 新しく農業を始めるために、農地を借りたいとき

このように、農地を遊ばせない、新たに農業を始めたい、農地を大規模化し産業にしたい人たちの為の制度が、農地バンクである。

●なぜ農地バンクが必要となったのか

日本の農業は、基本的に小規模農家が支えている。これは第二次世界大戦後の農地改革により、小作人から自作農への転換が行われたことで、大地主が消滅し、農地が細分化したという経緯によるもの。

しかし、広大な農地を皆で分割したことで、農業は非効率になってしまった。しかも、ただでさえ分割された農地は、時間の経過と共に売買などで所有権がどんどん移転・分散し、日本の農地はさらに細切れになってしまった。

そこで、農地バンクを介して、農地の貸し借りを円滑にできるように、細分化された農地を上記のイメージ図のように集約化させる。これにより、日本の農業にかかるコスト削減し、効率を上げる。

また、耕作放棄地の増加という日本の農業特有の問題点の解決も必要だった。

わが国は、少子高齢化が進む中、農業を新しく始めようにも農地が入手しにくいという実状から、跡継ぎも生まれず、離農や相続放棄などで農家が急激に減っている。戦後直後の食料自給率は70%を超えていたが、2019年現在では30%台にまで落ち込んでいる。

このままでは、日本の農業離れが進んでいく。それを食い止めるためにも農業バンクが生まれたのだ。

●何が改正されたのか

それでは、その農地バンク法案の改正が必要になったのか。その事情について、農業協同組合新聞が詳しく報じている。

今後さらに集積を進めるにあたって農水省は「農地の集積・集約化の前提となる地域内での話し合いが低調」であることや農地バンク事業について現場から事務手続きの簡素を求める声が多いことや、農地バンクが地域とのつながりが弱いことなどを課題として挙げた。

見直しにあたっての論点整理では、農地の集積・集約化のためにもっとも重要なことは、「地域の信頼を得て地域の特性に応じて市町村、農業委員会、JA、土地改良区など地域における話し合いのコーディネーター役と的確に連携した活動を行うこと」と強調し、農地バンクは「これらの点で未だ十分とは言えない」と総括した。

そのうえで、見直し方向では農地バンクに一本化させるのではなく、市町村や、JAが行っている農地集積円滑化事業などと「一体化」させる見直しを行うこととした。

その前提となるのが地域での話し合い。担い手への農地集積を加速化させるため、今後、数年で「人・農地プラン」を見直す。とくに地域内の農地について耕作者の年代情報や、後継者の確保状況などを、個人名の記載までは求めないが、地域の現況を地図に落とし込んで把握し、それに基づき中心的経営体への農地の集約化の将来方針をプランに記載することを必須化する方針だ。


そのためにコーディネーターを話し合いに積極的に参加させ、農業委員や農地利用最適化推進委員はその役割を法令で明確に定める。農地バンクの仕組みも簡素化し、農地の出し手から農地バンク、農地バンクから受け手への権利設定を一括して行うことができる仕組みを設ける。

また中山間地域など担い手が不足している地域では、担い手を確保するための畑地化も含めた基盤整備の活用や、新規作物の導入など総合的な対応が必要だとして、それらの対策を講じたうえで農地バンクが積極的に協力する仕組みを検討する。

農地利用集積円滑化団体については農地バンクに統合一体化するが、ブロックローテーションの取り組みや新規就農の促進など、農地利用で実績があるJAなどは、市町村が行ってきた農地の配分計画案の作成もできる仕組みも設ける。政府は関係法律を見直し次期通常国会に必要な法案を提出する。

引用元 農地バンク運営見直しへ 農水省

簡単に言えば、従来の農地バンク制度の問題意識と方向性は間違っていなかった。

しかし、それを実現するための実務的な仕組みが不足していたのである。だからこそ、今回の改正で、市町村、農業委員会、JA、土地改良区といった既存の制度とうまく組み合わせ、また、課題となっていた煩瑣な事務手続きを簡素化する。

これにより、本来の狙いであった、農業の活性化と大規模化を進め、世界と肩を並べられる産業としての農業に転換させる、まさしく「攻めの農業」である。


日本の食の安全性と品質は世界に誇れるが、それだけでは日本の農家の競争力は頭打ちである。価格競争力と営業力と戦略性と価格競争力がなければ、大きな世界の市場では勝てない。

つまり、日本の農家がさらに活性化するには、企業並みの運営が必要であり、農地バンク制度がそれを後押しするのだ。

まさしく、アベノミクスの農業改革を代表するのが「農地バンク法案」なのだ。

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