
閣法 第192回国会16号 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案のまとめ
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目次
改正法案の概要
議案審議経過情報
議案情報
参考記事
選択された議案の情報
提出回次:第192回
議案種類:閣法 16号
議案名:商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案
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改正法案の概要
第196回 商法及び国際海上物品運送法の改正法案の国会提出
改正法案では,本則において,「商法」及び「国際海上物品運送法」の一部を改正する規定が設けられるとともに,附則において,これらの改正に付随して必要となる関係法令の改正規定や施行日・経過措置等の規定が設けられています。
また,商法においては,次に詳述するような運送・海商の改正のほか,これ以外の片仮名文語体の規律が残る分野(仲立営業,問屋営業及び寄託)についても,平仮名化する改正がされており,今回の改正によって,「商法」の全ての規律が平仮名化されることとなります。このように,今回の改正法案は,我々ユーザーにとって,商法全体の理解が容易になるものであるという点でも大いに歓迎すべき改正であると考えます。
改正法案のうち,実質的な改正がされる運送・海商の規律の主なものは,次のとおりです。
(1) 航空運送・複合運送
各種運送に関する総則的規律を設け,現在は規定を欠いている「航空運送」や,陸上・海上・航空を組み合わせた「複合運送」にも,これを適用することとされました。また,複合運送の運送人の責任は,運送品の滅失等の原因が生じた区間に適用されることとなる法令又は条約の規定に従うこととされました。
(2) 危険物に関する通知義務・荷送人が無過失の場合の免責
危険物に関する通知義務については,多様化する危険物の安全な運送を確保するという観点から,運送品が危険物である場合に,荷送人に危険物に関する通知義務を課す規定を新設することとされました。
法制審議会商法部会では,この通知義務に違反した荷送人の損害賠償責任の在り方に関して,荷送人に帰責事由がない場合にも荷送人が責任を負うか否かについて,意見が大きく分かれましたが,様々な議論を経た結果,最終的には,荷送人は,危険物に関する通知義務に違反した場合には,これによって生じた損害の賠償責任を負うが,その違反につき荷送人に帰責事由がないときは,荷送人は賠償責任を負わないとすることとされました。これは,物流においては,製造業者・商社・利用運送事業者・消費者など様々な関係者が危険物の荷送人となるところ,各自の帰責事由の有無に応じた弾力的な判断ができるようにすべきであることなどの理由によるものです。
(3) 運送人及びその被用者の不法行為責任の軽減
現行法では,運送品が高価品であることを荷送人が申告しなかった場合における運送人の責任の免責規定(商法578条),運送人の損害賠償額の定額化(商法580条)等の運送人の契約責任を軽減する規定は,基本的には,運送人及びその被用者の不法行為責任には及ばないと解されていますが,これらの規定の趣旨を没却させないようにするため,その効果を運送人及びその被用者の不法行為責任についても及ぼすこととされました。
(4) 旅客運送人の責任に関する片面的強行規定
旅客運送人の責任について,旅客の安全確保の観点から,旅客の生命又は身体の侵害による運送人の責任を軽減する特約を一律に無効とすることとされました。ただし,運送事業の合理的な運営や真に必要な運送の確保等の観点から,運送の遅延を主たる原因とする運送人の責任や災害地における運送及び重病人等の運送については,例外的に免責特約の余地を残すこととされました。
(5) 定期傭船
海運実務上頻繁に利用される定期傭船契約(船舶所有者等が艤装〔航海に必要な装置等を設置すること〕して船員を配乗した船舶を一定期間相手方に利用させる契約)について,新たな契約類型として,基本的な規律を新設することとされました。
(6) 堪航能力担保義務の過失責任化
国内海上運送における堪航能力担保義務(船舶の整備や適切な船員の配乗などによって船舶が安全に航海をする能力を有することを担保する義務)について,現行法の下では,この義務違反による責任は無過失責任であると解されていました(商法738条,最高裁昭和49年3月15日判決参照)が,国際海上運送とのバランス等を踏まえ,国内海上運送に関しても,堪航能力担保義務違反による責任を過失責任に改めることとされました。
(7) 海上運送状
貿易実務上船荷証券に代えて頻繁に利用される海上運送状(Sea Waybill)について,基本的な規律を新設することとされました。
(8) 船舶の衝突によって生じた債権の消滅時効
現行法では,船舶の衝突による物損に関する不法行為責任は,被害者が損害及び加害者を知った時から1年の消滅時効に服するとされています(商法798条1項,最高裁平成17年11月21日判決参照)が,国際条約とのバランス等を踏まえ,不法行為の時から2年の消滅時効に服することとされました。なお,人身損害に関する不法行為責任については,人命尊重の見地から,国際条約とは異なり,商法に短期消滅時効の規律を設けず,民法724条により,加害者等を知ってから3年(民法改正後は5年)の消滅時効に服することとされました。
(9) 海上保険
海上保険について,加入の際には保険契約者の側で危険に関する重要事項を告知すべき旨を明文化することとされました。
(10)国際海上物品運送法の改正
国際海上物品運送法が定める運送人の責任限度額に関して,その元となっている国際条約(ヘーグ・ヴィスビー・ルールズ)についての諸外国の解釈に対応するという観点から,運送品1包ごとに各別に責任限度額を定めるのではなく,運送品の全体につき責任限度額を定めるように改めることとされました。
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議案審議経過情報
(注)下記の表で内容がない箇所は、現時点で情報が未定のもの、もしくは情報がないことが確定したものです。
項目 | 内容 |
---|---|
議案種類 | 閣法 |
議案提出回次 | 192 |
議案番号 | 16 |
議案件名 | 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案 |
議案提出者 | 内閣 |
衆議院予備審査議案受理年月日 | |
衆議院予備付託年月日/衆議院予備付託委員会 | / |
衆議院議案受理年月日 | 平成28年10月18日 |
衆議院付託年月日/衆議院付託委員会 | 平成28年12月13日 / 法務 |
衆議院審査終了年月日/衆議院審査結果 | / |
衆議院審議終了年月日/衆議院審議結果 | / 閉会中審査 |
衆議院審議時会派態度 | |
衆議院審議時賛成会派 | |
衆議院審議時反対会派 | |
参議院予備審査議案受理年月日 | 平成28年10月18日 |
参議院予備付託年月日/参議院予備付託委員会 | / |
参議院議案受理年月日 | |
参議院付託年月日/参議院付託委員会 | / |
参議院審査終了年月日/参議院審査結果 | / |
参議院審議終了年月日/参議院審議結果 | / |
公布年月日/法律番号 | / |
議案情報
第193回国会(常会)
各国会回次ごとに提出された法案等をご覧いただけます。
議案審議情報
件名 | 商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案 | ||
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種別 | 法律案(内閣提出) | ||
提出回次 | 192回 | 提出番号 | 16 |
提出日 | 平成28年10月18日 |
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衆議院から受領/提出日 | |
衆議院へ送付/提出日 | |
先議区分 | 衆先議 |
継続区分 | 衆継続 |
参議院委員会等経過 | |
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本付託日 | |
付託委員会等 | |
議決日 | |
議決・継続結果 |
参議院本会議経過 | |
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議決日 | |
議決 | |
採決態様 | |
採決方法 |
衆議院委員会等経過 | |
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本付託日 | 平成29年1月20日 |
付託委員会等 | 法務委員会 |
議決日 | 平成29年6月16日 |
議決・継続結果 | 継続審査 |
衆議院本会議経過 | |
---|---|
議決日 | 平成29年6月16日 |
議決 | 継続審査 |
採決態様 | 全会一致 |
採決方法 | 異議の有無 |
その他 | |
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公布年月日 | |
法律番号 |
議案等のファイル | |
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提出法律案のPDFファイルは、こちらでご覧いただけます。 |
参考記事
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案 – 衆議院
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案 – 法務省
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案:参議院
第193回国会での内閣提出法律案一覧 / 内閣法制局
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案の要点解説勉強
