【ASEAN争奪戦】中国が首脳会談を開催すると 英国がG7に招待へ 日本は安倍政権時代からASEANを重要なパートナーとし、岸田政権も継承
ASEAN争奪戦が始まったようだ。中国がASEAN諸国を取り込もうと、習近平主席が自ら首脳会談に参加すると、イギリスはG7にASEAN加盟国を招待すると表明。
中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は22日、オンライン形式で特別首脳会議を開催した。中国の習近平国家主席は「包括的戦略パートナーシップを構築した」と述べ、関係格上げを正式に宣言した。一方、先進7カ国(G7)の議長国を務める英国は同日、12月に英中部リバプールで行われる外相会合にASEAN加盟国を招待すると表明。インド太平洋地域の中心に位置する東南アジアの戦略的重要性が高まる中、欧米と中国が影響力拡大を狙う構図が鮮明となった。
中国とASEANの特別首脳会議は、双方が1991年に対話を始めて30年の節目を記念し、習氏が主催した。これまで中国はASEANとの会議に李克強首相を出席させてきたが、習氏が主導することで関係強化を印象付ける狙いがある。習氏は会議でASEANとの連携の重要性を強調し、一部加盟国と領有権を争う南シナ海について「安定をともに守らなければならない」と自説を展開した。
中国が念頭に置くのは米国の動きだ。バイデン米政権は7~8月にオースティン国防長官とハリス副大統領を相次いで東南アジアに派遣し、10月にはバイデン大統領自身がASEANに総額約1億ドル(約114億円)の支援を表明した。トランプ前政権が「東南アジア軽視」と批判を浴びたことを教訓に、関与を強める姿勢を鮮明にしている。
ASEAN加盟国は米中の間で利益を最大化したい意向が強く、シンガポールのリー・シェンロン首相は会議で中国との関係格上げについて、「相互に有益になると確信している」と歓迎する意向を示した。
ただ、中国はASEAN接近を目指す一方、南シナ海での覇権的な海洋進出を緩めようとしていない。一部ASEAN加盟国は対中不信が根強く、会議でフィリピンのドゥテルテ大統領は中国による自国船の航行妨害を「嫌悪する」と強く非難した。今後、ASEAN内では中国牽制(けんせい)のため米国の関与拡大を期待する声が高まる可能性がある。
会議には国軍がクーデターで実権を握ったミャンマー代表は出席しなかった。国軍に融和的な中国はミン・アウン・フライン総司令官を招待する意向を示していたが、強権的な政権奪取に反発する一部加盟国の反対で見送られた。
ASEAN加盟国を招待するG7外相会合(12月10~12日)では、インド太平洋地域での協力のあり方や世界経済問題などについて協議される見通し。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/211122/mcb2111222236011-n1.htm
ASEAN加盟国はインド太平洋戦略にとって両陣営が抱え込みたい存在だ。
日本は?と思う人も居るだろうが、日本は、既に安倍政権時代からASEAN外交を重視していて積極的に取り組んでいる。平成25年には「対ASEAN外交5原則」を発表している。ASEANの対等なパートナーとして共に歩んでいくというものだ。
<対ASEAN外交5原則>
1.自由、民主主義、基本的人権等の普遍的価値の定着及び拡大に向けて、ASEAN諸国と共に努力していく。
2.「力」でなく「法」が支配する、自由で開かれた海洋は「公共財」であり、これをASEAN諸国と共に全力で守る。米国のアジア重視を歓迎する。
3.様々な経済連携のネットワークを通じて、モノ、カネ、ヒト、サービスなど貿易及び投資の流れを一層進め、日本経済の再生につなげ、ASEAN諸国と共に繁栄する。
4.アジアの多様な文化、伝統を共に守り、育てていく。
5.未来を担う若い世代の交流を更に活発に行い、相互理解を促進する。
「自由、民主主義、基本的人権等の普遍的価値の定着及び拡大に向けて、ASEAN諸国と共に努力していく」とあるように、この時すでに中国を意識した外交を行なっていたのだ。
岸田総理も外務大臣時代に、当時の安倍総理と共にASEAN外交に積極的に取り組んでいて、総理就任してからもASEAN関連首脳会議にオンラインで参加した。この中で、岸田総理は「ASEAN各国と連携し、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた取り組みを力強く推進する」と述べた。安倍政権のASEAN外交を岸田政権でも継承しているのだ。
さらに、岸田総理は、日本とASEANの交流が50周年を迎える再来年に、ASEAN各国の首脳を日本に招いて特別首脳会議を開催する意向を示した。
既に日本はASEAN諸国と共に『自由で開かれたインド太平洋』を成し遂げようと動いていた。