Oops! It appears that you have disabled your Javascript. In order for you to see this page as it is meant to appear, we ask that you please re-enable your Javascript!

安倍総理の欧州3カ国歴訪の成果と狙い

安倍晋三首相は10月16日午前、スペイン、フランス、ベルギーの欧州3カ国を歴訪するため、政府専用機で羽田空港を出発。スペインでサンチェス首相、フランスではマクロン大統領と会談、ベルギーでアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席。自由貿易体制の強化や北朝鮮問題での連携が目的の歴訪だったが、今回はその成果と狙いを紹介しよう。

1.欧州歴訪の成果

(1)スペイン:日スペイン、戦略的パートナーで合意 両首相が初会談

安倍晋三首相は16日午後(日本時間17日未明)、スペインのサンチェス首相と会談した。両国の関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げし、政治や安全保障など幅広い分野で協力を強化することで合意した。北朝鮮問題で連携し、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)を踏まえて経済分野で関係を拡大していくことも確認した。首脳会談は6月にサンチェス氏が首相に就任して初めて。
両国は会談後に発表した共同声明で、米国と中国の貿易摩擦激化を踏まえ「自由で開かれた貿易を推進し、全ての不公正な貿易慣行を含む保護主義と闘う」と表明。「グローバル安全保障、持続可能な開発、繁栄の基礎となる国際秩序を維持するため協力して指導力を発揮する」とした。
安倍首相は会談で「2国間の協力にとどまらず、国際社会が直面する幅広いグローバルな課題にも緊密に協働していく」と述べた。 共同声明では、中国の海洋進出を念頭に「力による一方的な現状変更に強く反対」とし、ルールに基づく海洋秩序の維持と、国際法に従った海洋紛争の平和的解決への関与を確認した。
北朝鮮問題では、非核化に向けて国連安全保障理事会の制裁決議の完全な履行の必要性を再確認。日本人拉致問題の即時解決が重要だとの認識でも一致した。
https://www.sankei.com/world/news/181017/wor1810170014-n1.html

今回、日本とスペインは新たな関係へ移行することになった。「戦略的パートナーシップ」とは、安全保障や経済を含む幅広い分野で協力を拡大する関係を意味する。しかし、なぜ、安倍政権は「戦略的パートナーシップ」をスペインと構築したのか。それは日EU戦略的パートナーシップを推し進めるためである。日EUパートナーシップは2017年に「大枠合意」となり、これは「大筋合意」と違いかなり大雑把な合意を意味する。まだ道のりがあるということだ。そこで、日本としてはよりEUとの連携を強固にするために、まずは個別のEU諸国と国家間の連携を図り(今回のスペインとの協定もその一環である)、その上で日本とEU全体との戦略的パートナーシップを合意する考えだと思われるのである。

(2)フランス:安倍首相、仏大統領と会談 海洋安保を強化で一致

安倍晋三首相は17日午後(日本時間同日夜)、フランスのマクロン大統領と会談し、海洋進出を強める中国を念頭に海洋安全保障分野での協力強化を申し合わせた。北朝鮮の非核化に向け国連安全保障理事会が決めた対北制裁の完全な履行と国際社会の連携が不可欠との認識を共有し、日本人拉致問題の早期解決が必要だとの立場でも一致した。
安倍首相は会談に先立つ共同記者発表で「日仏両国は普遍的価値を共有する特別なパートナーだ。国際秩序が挑戦される中で、両国の協力はより一層重要になってくる」と強調した。マクロン氏は「両国は非常に強固な友好国として結ばれている」と応じた。
会談では、安倍首相が早期の訪日を要請し、マクロン氏も意欲を示した。
両首脳は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、自衛隊と仏軍の共同訓練を拡大することで一致した。海洋に関する問題を話し合う包括的対話も促進する。北朝鮮の非核化の前提として、制裁逃れを阻止する取り組みを維持、強化することも申し合わせた。
また米国を念頭に、保護主義に対抗するため日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の早期発効を目指すことも確認した。
https://www.sankei.com/politics/news/181017/plt1810170059-n1.html

中国の人権問題は欧州ではかなりの波紋を生んでおり、欧州の対中心理はマイナス傾向に傾きつつある。例えば、インターポール総裁だった孟宏偉(中国公安部副部長)が、中国当局に拘束され行方不明になった事件の波紋も広がりを見せている。これは東南アジアや日本が懸念する中国の海洋進出に歯止めをかけるべく、欧州諸国の連携を加速・発展・拡大するまたとないタイミングである。また、EUとのEPAの早期締結を目指すには、EUをドイツとともにけん引する大国、フランスとの協力は必要不可欠である。

(3)ベルギー<ASEM>:安倍首相、対北連携と海洋安保の協力訴え ASEM首脳会議閉幕

安倍晋三首相は19日午後(日本時間同日夜)、ベルギーで開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、北朝鮮の非核化をめぐり、国際社会が結束する必要性を訴えた。海洋進出を強める中国を念頭に、海洋安全保障での連携強化も呼びかけた。
安倍首相は北朝鮮の非核化に向け、国際社会が結束して国連安全保障理事会決議を完全に履行する必要があると主張し、日本人拉致問題の早期解決に向けた協力を要請した。
南シナ海で軍事拠点化を強める中国に対抗するため海洋安保分野での協力も求めた。国際法に従った海洋紛争の平和的解決などを訴え、「一方的な現状変更は許容されない」と重ねて強調した。
7月に署名した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を踏まえ、自由で公平なルールに基づく自由貿易体制維持の必要性も訴えた。台頭する保護主義には「一方的な貿易制限措置の応酬はどの国の利益にもならない」と指摘した。
安倍首相は首脳会議に先立ち、EUのユンケル欧州委員長と会談し、日欧EPAの国内手続きが年内に終了するよう努力することで一致した。ドイツのメルケル首相、イタリアのコンテ首相らとも個別に会談した。
首脳会議は北朝鮮に「完全かつ検証可能で不可逆的な」非核化を求めることを盛り込んだ議長声明を採択し、閉幕した。安倍首相は一連の欧州歴訪の日程を終え、20日午後に帰国する。
https://www.sankei.com/politics/news/181020/plt1810200005-n1.html

地道な外交で発言権を得た日本は、日本が取り巻く環境を世界に向けて発信し、共感を得る力を得た。
それは、各国の有形無形の協力を得るという形で日本の国力や政策の実現に資するものである。
マスコミや野党は今までの安倍総理の地球儀外交を「意味がない」と批判的な意見をしてきたが、こういう時こそ今まで行ってきた外交の蓄積が力を発揮してくるのである。

2.歴訪の狙い
それでは、これらの歴訪の成果が判ったが、そこにはどのような戦略が隠されていたのか。そして、その戦略はどのような状態にあるのか。以下では紹介しよう。
(1)安倍総理が昨年打ち出した重要な外交戦略「インド太平洋戦略」に、世界が共鳴し始めている
安倍総理が展開する外交の背景にあるのは、トランプ政権も安倍政権の影響で採用した「インド太平洋戦略」である。

 昨年(2017年)秋以来、「自由で開かれたインド太平洋戦略(Free and Open Indo- Pacific Strategy:FOIP)」が国内外で広く注目を集めている。これは、比較的コンパクトで判り易くまとめられていると思われる日本経済新聞の解説をそのまま引用すれば「2016年8月にケニアで開いたアフリカ開発会議(TICAD)で安倍晋三首相が打ち出した外交戦略。成長著しいアジアと潜在力の高いアフリカを重要地域と位置づけ、2つをインド洋と太平洋でつないだ地域全体の経済成長をめざす。自由貿易やインフラ投資を推進し、経済圏の拡大を進める。安全保障面での協力も狙いの一つ。法の支配に基づく海洋の自由を訴え、南シナ海で軍事拠点化を進める中国をけん制する。」ものとされているのであるが、この「中国をけん制」という部分を巡っての解釈が別れるなど、やや判りにくいものとなっている感は否めない。国内主要メディアの論調は、「一帯一路」に対抗する対中戦略としての性格を強調するものが大勢である一方、日本政府としては安倍首相が本年(2018年)1月の施政方針演説で「この大きな方向性の下で、中国とも協力して・・・」と述べるなど、「中国をけん制」というイメージを打ち消そうとするかの発信が目立っている。この点は海外の論調も同様であり、例えば「インド太平洋」という地域概念についても、その提唱者の1人とされるインドのGurpreet S. KhuranaがWashington Post紙への寄稿で「将来的には中国も包含していく形で共通の繁栄を目指すべき」と主張する一方で、同じインドのC Raja Mohanはシンガポール国立大学南アジア研究所(ISAS)ブリーフィングにおいて後述する日米豪印四ケ国対話に言及しつつ、これを「中国の攻撃的な戦略を放棄」させるものであると指摘するなど、やはりその評価が大きく別れているのである(KhuranaとMohanの主張については「海洋安全保障情報旬報2017年11月1日-11月30日」参照)https://www.spf.org/oceans/analysis_ja02/hpfoip.html

・自由で開かれたインド太平洋戦略

国際社会の安定と繁栄の鍵を握るのは,
「2つの大陸」:成長著しい「アジア」と潜在力溢れる「アフリカ」
「2つの大洋」:自由で開かれた「太平洋」と「インド洋」
の交わりにより生まれるダイナミズム
⇒ これらを一体として捉えることで,新たな日本外交の地平を切り拓く

基本的な考え方
法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序は,国際社会の安定と繁栄の礎。特にアジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域は,世界人口の半数以上を養う世界の活力の中核。
海洋秩序は,海賊,自然災害,テロ,大量破壊兵器の拡散,違法操業などの様々な脅威に晒されている。こうした脅威を取り除き,インド太平洋地域の自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することにより,この地域をいずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす「国際公共財」とし,この地域全体の平和と繁栄を確保していく。
また,一定の政治的安定を遂げ成長著しいアジアと,潜在力溢れる中東・アフリカを結びつけ,その連結性を向上させていくことで,地域全体の安定と繁栄を促進する。
こうした考え方に賛同してもらえるのであれば,いずれの国とも自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力可能(米国,インド,豪州,ASEAN諸国,英仏等の欧州諸国,中東諸国等とも協力していく。)
※ この戦略は,海洋秩序に対する様々な脅威に取り組み,自由で開かれたインド太平洋を維持することで,この地域全体の平和と繁栄を確保していくためのものであり,特定の国を対象としたものではない。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」は,以下の三本柱で構成。
① 法の支配,航行の自由,自由貿易等の普及・定着⇒ 日・米・印・豪・ASEAN諸国・欧州諸国・中東諸国等との連携・協力 等
② 経済的繁栄の追求(連結性の向上等)⇒ 東南アジア域内,南西アジア域内,東南アジア~南西アジア~中東~東南部アフリカの連結性向上 等
③ 平和と安定の確保⇒ 海上法執行能力の構築支援,人道支援・災害救援,不拡散分野等での協力 等

上記にあるように「自由で開かれたインド太平洋戦略」の目的は中国の牽制や封じ込めが目的ではない。あくまでもインド洋と太平洋を取り巻く関係諸国が繁栄・発展していくことが目的である。しかし、海洋進出を図ろうとする中国が周辺諸国を脅かす存在であることには変わりはなく、またその政策変更を強制することは重要である。日本の戦略や構想を世界に丁寧に説明し、世界がそれに共鳴しつつあることで、中国の冒険主義や拡張主義に変更を迫る力が、いま働きつつある。

(2)ウイグル亡命団体が東京で国際組織を設立(「インド太平洋戦略」に賛同!)

中国当局による少数民族ウイグル族への弾圧に国際社会が批判を強める中、ノーベル平和賞候補になったウイグル人女性人権活動家、ラビア・カーディル氏が、世界の活動家らと少数民族の尊厳や権利の擁護を訴える国際連帯組織を東京都内に設立することが16日、分かった。26日に国会内で結成大会を開く。弾圧を受ける当事者が広範な国際組織をつくるのは初めてで、人権問題をめぐる中国への強い牽制となりそうだ。
ラビア氏らの新組織は「自由インド太平洋連盟」。事務局は、これまで各自が個別に活動を行ってきた実績のある東京に置く。
26日はラビア氏のほか、インド北部ダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府の議員や、世界南モンゴル(中国・内モンゴル自治区)会議の代表、幹部らが来日し、インド、ベトナムの活動家らと協力して連盟を立ち上げる。日本の支援者も加わる。各地の少数民族が中国などから受ける迫害の実態を踏まえ、人権状況の改善を訴える宣言を採択する予定だ。
ラビア氏らは「近年の中国の拡張主義的企てと人権抑圧は、中国国境の内側に住む少数民族に言い表せない惨状を招いている」と中国を批判。一方、安倍晋三首相が提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」について「中国の拡張主義に対する明確な答えだ」と高く評価している。
トランプ米政権は中国当局によるウイグル族の弾圧に批判を強めており、ペンス副大統領は4日の演説で、新疆ウイグル自治区で100万人ものウイグル族が「再教育施設」に捕らえられていると訴えた。結成大会が開かれる26日には首相と中国の習近平国家主席による首脳会談が北京で行われる予定で、首相が中国の人権問題にどう言及するのかにも注目が集まる。https://www.sankei.com/world/news/181017/wor1810170003-n1.html

今般の欧州歴訪の成果では日欧の人権の保護を包含する「インド太平洋戦略」における連携がテーマだったが、米ペンス氏やポンペオ氏らが中国のウイグル人迫害に対し批判的な発言を推したのを皮切りに、欧州でも同調する動きを見せている。スイスでは人体標本展に「中国で拷問され処刑された受刑者らの遺体が含まれている可能性がある」として催しを中止したり、英BBCが中国の「臓器移植産業」に対し批判的な報道をしたりと世界的に中国の人権問題に対し包囲網が敷かれる結果となっている。まさに安倍総理の欧州歴訪の意味はここにある。ウイグル亡命団体が東京に組織を設立したのも「インド太平洋戦略」に賛同したのもあるが、アジアで唯一中国に対して、堂々と物を言える国が日本だからである。そういった中で、日本に世界が関心の目を向けるのは当然なことである。

(3)北朝鮮問題が進展している

マイク・ポンペオ米国務長官は、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記との会談で、北朝鮮が日本国民の拉致問題を提起すると発表した。
ポンペオ氏は、日米間の関係は強く、両国は貿易交渉を進める立場にあると述べた。
訪朝前に東京で安倍晋三首相に訪問した後、記者団と会談した。https://www.reuters.com/article/us-northkorea-nuclear-pompeo-japan-abduc/pompeo-says-he-will-raise-japanese-abduction-issue-in-north-korea-idUSKCN1MG06T

上記の報道を見れば、日米関係は、安倍-トランプの首脳間同士の友好だけでなく、政府全体のレベルでも強固な連携がなされていることがうかがえる。しかも、今回の欧州歴訪により、欧州との人権をめぐる強化や北朝鮮に対する連携は一層強化された。これにより、北朝鮮に対して、交渉を進める体制がそろいつつあることがわかる。何故ならば、欧州諸国と北朝鮮の関係は、金正恩のスイス留学を挙げるでもなく非常に深いからである。今後、北朝鮮側から拉致問題を提起されれば解決に向けて加速すると思われる。

このように、安倍総理の欧州歴訪の成果はメディアの報道量の少なさに反比例して大きく、そして、それは「インド太平洋戦略」や対北朝鮮外交上ではかなりの進展をひそやかに、しかし確実にみせているのである。マスメディアの中には、お友達外交だのバラマキ外交だのと書き立てるものもあるが、これは木を見て森を見ない指摘であろう。批判するにしても「インド太平洋戦略」の中身や地道な努力を事実確認した上で批判するのが筋である。

いずれにせよ、安倍政権の「インド太平洋戦略」をはじめとする外交政策には要注目である。

この記事が気に入ったら
いいね ! をお願いします!

関連記事一覧

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。