古館氏「民主党政権時代、大臣クラスから直にクレームが」安倍政権になってからは「全然、直で来ないですよ」
テレビ朝日系報道番組「報道ステーション」のMCを務めていた古舘伊知郎氏が、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」に出演した際に、「民主党政権時代、大臣クラスからクレームが来た」と、当時の政権が放送の内容について介入してきたことを暴露した一方で、安倍政権になってからは「全然、直で来ないですよ」と明かした。
フリーの古舘伊知郎アナウンサー(69)が、5日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会NP」(日曜午後1時30分)に出演。日本の報道の自由について言及した。
国際NGO「国境なき記者団」は3日、2024年の「報道の自由度ランキング」を発表。調査対象の180カ国・地域のうち、日本は70位(前年68位)だった。
古舘アナは日本に報道の自由があるかについて、「ない」とし、パネルに「民主党政権時代、大臣クラスからクレームが来た」と掲げた。
古舘アナといえば、04~16年まで、テレビ朝日系報道番組「報道ステーション」のMCを務めていたが、「09年に民主党が政権を取った以降の印象で言うと、結構大臣クラス、政治家から直で番組なりに電話がかかってきて『あのキャスター黙らせろ』とか、『すぐ謝罪しないと困る』とか言ってくる感じがあったんですよ。ええって思ってたんですよ」。
12年に自民党が政権を取り戻し、第2次安倍内閣となったが「自民党は3年間観察したと思います。ちょっと洗練された。第2次安倍政権から。全然、直で来ないですよ。番組や僕なんかに。でも、政治部記者とかから、さざ波のように『あの人がこうで、幹事長がああで、こうみたい』って言いながら廊下ですれ違ったりしますよ。こういうことが幻覚? 幻聴? みたいなことはよくあるんですよ」と漏らした。
古館氏と報道ステーションに限っては、民主党政権時には直接的な圧力があったが、安倍政権になってからは直には無かったということだ。あっても、伝聞で聞いた程度の話らしい。
昨年、放送法に関する総務省の行政文書という怪文書を巡り、立憲民主党の議員らが高市早苗経済安全保障担当相に辞任を迫っていたが、まったく呆れる。
日本の報道の自由度ランキングが下がったのは、政治のせいだという意見がよくあるが、「国境なき記者団」のフィオナ・オブライエン英国支部長は次のように指摘している。
日本が報道の自由の原則を支持しているのは理解している。しかしランキングが低くなりがちなのは、ジャーナリストが特定のテーマについて報道するのが難しいからだ」と答えた。
「ジャーナリストがよりデリケートなテーマについて報道する自由に伝統の重みや経済的利益、政治的圧力が影響を与え、政府の責任を十分に問うことを妨げている」と解説する。
ジャニーズ王国の創設者ジャニー喜多川(本名・喜多川擴=ひろむ、故人)の児童性的虐待について昨年3月、英BBC放送がTVドキュメンタリー『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』を放送するまで週刊文春や告発本を除き、日本の主要メディアはダンマリを決め込んだ。
これは日本メディアの本質をあらわしているように筆者には感じられる。ジャニーズ事務所(SMILE-UP.に社名変更)に睨まれると所属人気タレントに出演してもらえなくなる。公然の秘密だった児童性的虐待は当人の死後もタブーとして封印された。
スポンサーになり得る大企業や、敵にしてはいけない大手芸能事務所などに忖度し、報道でも触れないことが多い。「日本「報道の自由度ランキング」70位」とあるが、メディアの勝手な忖度の影響も大きく、このような結果になっているのではないだろうか。
記事には「これは日本メディアの本質をあらわしているように筆者には感じられる」とあるが、まさにその通り。報道しない自由をメディアが行使した結果、メディアは自ら評価を下げているのだ。
メディアはそういった実態を隠すため、批判の矛先を政治に向けているのだろう。