
野田代表「談話は無理としても、なんらかの首相のコメントは出すべきだ」と石破首相の「戦後80年見解」を後押し
石破首相は「戦後80年見解」の発表を当面は見送る意向を固めたが、見解を出すタイミングをなお探る構えのようだ。
自民党内からは「必要ない」との声があがっているが、立憲民主党の野田代表は「やり遂げるべきだ」と、首相を後押しした。
立憲民主党の野田佳彦代表は4日の衆院予算委員会で、石破茂首相が意欲を示す戦後80年に合わせた見解の発出に関する議論を取り上げ、「党内政局的にいろいろあるだろうが、やり遂げるべきだ」と首相を強く後押しした。
野田氏は、「私は必ずしも50年、60年、70年と10年刻みで談話を出すべきとは思っていなかった」と述べる一方、自民党の西田昌司参院議員による「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)に関する発言や、参院選では「さや」の名前で活動した参政党の塩入清香参院議員による「核武装は安上がり」発言を問題視。「もう1回、過去の歴史に向き合うということをやらなければいけないのではないか。歴史を忘れた、戦争の記憶が風化しているかのような発言や行動が多すぎる」と主張した。戦後80年に向けて、「閣議決定する時間がもうないから、談話は無理としても、なんらかの首相のコメントは出すべきだ」と訴えた。
首相は「形式はともかく、戦争を二度と起こさないための発出というものが必要だと思っている」となどと前向きに答弁した。
これを受けて野田氏は「戦争で帰らぬ人となった人たちの犠牲の上にこの国は成り立っている。もう1回、思いを致すことは大事だ。これこそ首相の真骨頂だったのではないか。ある意味、一番やりたかったことではないか」と首相の心中を推し量った。
自民内には、保守派を中心に首相による談話や見解の発出への極めて強い反発がある。野田氏は「党内政局的にいろいろあるだろうが、続投するのであれば、本人がやり遂げたいと思うことをやり遂げるべきだ」と強く促した。
野田氏の発言には、自民を分断し、弱体化させる狙いもありそうだ。野田氏は首相時代、強い信念のもとで選挙公約になかった消費税増税を含む社会保障と税の一体改革を決断し、与党だった民主党の分裂を招いた。その後の衆院選で民主は大敗し、下野している。
自民党の西村元経済産業相は「70年談話には結びにおいて、戦後80年、90年、100年に向けて日本の国づくりの理想を語っており、そうした意味でもこれ以上のいわゆる戦後談話は不要と考えています」とコメントしている。
今日の両院議員懇談会でも意見が出ました。戦後70年談話は、安倍晋三総理が、戦後に終止符を打つために、有識者による懇談会など様々な意見を踏まえながら丁寧に時間をかけてまとめられたものです。当時、そして今も、多くの国民によって支持されているものと理解しています。また70年談話には結びにお… https://t.co/J3xT1d4l3N
— 西村やすとし NISHIMURA Yasutoshi (@nishy03) July 28, 2025
安倍談話は、村山談話、小泉談話など他の談話と比べると、長い時間を要して幅広い有識者から様々な意見を聞いた上で、政府として新たな談話を検討した。
野田代表は無責任な立場で一般論を述べているつもりだろうが、そんな練りに練った談話が石破首相の思い付きの「見解」で上書きされ、再び他国を利するようなことは断じてあってはならない。
石破首相は、慰安婦問題をめぐる平成27年の日韓合意に関し「韓国で納得を得るまで日本は謝罪するしかない」と述べていた過去がある。発言を巡っては「『謝罪』という言葉は一切使っていない。『お互いが納得するまで努力を続けるべきだ』と話した」と、石破首相は一部否定していたが、言っている意味はほとんど同じだ。こんな認識の人物が前後80年見解を発表するのは非常に危険だ。


