
防衛省の有事医療拡充は「戦争準備」なのか? 抑止力と外交の現実
しんぶん赤旗がSNS上で次のような投稿を行い、波紋を広げている。
「防衛省は南西諸島での激しい戦闘を想定し、自衛隊那覇病院で有事には病床を4倍に増やすなど、全国の主要な自衛隊病院で病床を大幅に増やす計画が分かりました。多数の自衛官が死傷することを前提にした戦争準備です。」
この投稿は、一見すると平和主義に基づいた警鐘のように思えるかもしれない。しかし、その本質は国家の安全保障という冷徹な現実を見失った、感情的な現状批判に終始していると言わざるを得ない。
そもそも、南西諸島における緊張感の高まりは日本側が意図して作り出したものではない。仮に「中国が台湾進攻を行わない」のであれば、日本がこの地域で激しい戦闘を想定し、莫大な予算とリソースを割いて備える必要など最初からないのだ。原因は明確に現状変更を試みる周辺国の覇権主義的な動きにある。
そうした脅威が目の前に迫る中、万が一の有事に備えて医療体制を拡充することを「戦争準備」と断じるのは論理のすり替えである。最前線に立つ自衛官の救命率を上げるための備えは、組織として当然の義務であり、防衛戦闘における被害を最小限に抑えるための正当な防衛策だ。これを行わずに放置することこそ、国家の不作為であり職務放棄である。
国際政治の現実において、防衛力や抑止力の強化は、単に対決姿勢を強めるためのものではない。それらはむしろ、外交交渉を成功に導くための強力なバックボーン(背骨)となる。軍事的な空白や弱みを見せれば、相手国に「今なら武力行使で要求を通せる」という誤ったシグナルを送り、かえって侵略を誘発しかねない。「攻めたら自国もタダでは済まない」と思わせる隙のない備え(抑止力)があって初めて、相手を武力行使ではなく「外交(話し合い)」の席へと着かせることが可能になる。
「備えを固めること」は、戦争を始めるためではなく、戦争を絶対に起こさせないための平和への不可欠な一歩なのである。


