原発「グリーンな投資先」と認定めぐり、朝日「EU原発回帰 日本の選択肢ではない」日経「参考にしたいEUの原発議論」と両極端の社説
EUが原子力を「クリーンなエネルギー」に含めるとの方針を示したことに対して、朝日新聞と日本経済新聞が両極端の社説を発表した。
まずは朝日新聞。朝日新聞は「EU原発回帰 日本の選択肢ではない」と、日本と欧州とでは「自然条件が違い、同一には議論できない」としている。
(社説)EU原発回帰 日本の選択肢ではない
欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会が、一定条件のもとで原発を地球温暖化対策に役立つエネルギーと位置づけた。しかし原発の活用については、EU内でも意見が割れている。様々な条件が異なる日本で、原発回帰の議論に結びつけるのは早計だ。
中略
日本の電力業界などからは歓迎の声があがる。しかし、東京電力福島第一原発の事故で経験したように原発事故が起きれば、生活への打撃は極めて大きく、環境も「重大な害」を被る。地震や火山が多く、台風も常襲する日本は、欧州とは自然条件が違い、同一には議論できない。
高レベル放射性廃棄物について、日本では地下に埋める最終処分地をめぐって「文献調査」は始まったが、その先は不透明で、見通しはついていない。万年単位の長期間にわたる地下の安定性を確認するには、今の科学知識や技術では限界もある。
原発は経済的にも有利ではないことが明確になりつつある。経済産業省が昨年公表した試算では、2030年の発電単価は太陽光発電が原発を下回った。可能な限り原発依存度を下げ、再生可能エネルギーの導入を進めるという政府の方針を忘れずに、脱炭素に取り組むべきだ。
朝日新聞は「2030年の発電単価は太陽光発電が原発を下回った」と、コスト面を強調しているが、これには続きがある。NHKは次のように報じている。
ただ、太陽光発電は天候による発電量の変動が大きく、実際にはバックアップのために火力発電を確保する必要がありますが、その費用は計算に含まれていません。
このため、経済産業省は発電以外にかかる全体的なコストについても議論していくとしています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210712/k10013135341000.html
この部分をカットしてコスト面を強調するのは乱暴だ。また、自然環境を訴えているが、災害で太陽光パネルが次々と破壊されていることを無視するのはおかしい。そのたびに設置しないさなくてはいけない。そのコストははどう考えるのか?ましてや太陽光発電を主力電力にするにはどれだけの太陽光パネルが設置され、どれだけの環境が破壊されるのだろうか。環境問題で環境破壊が行われることに朝日新聞は矛盾を感じないのだろうか。
一方で日本経済新聞は「参考にしたいEUの原発議論」という社説を発表し「エネルギー転換を円滑に進める現実的な判断」と評価している。
[社説]参考にしたいEUの原発議論
欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は、原子力発電と天然ガスを温暖化対策に貢献するエネルギーと位置付けた。
カーボンゼロの実現へ再生可能エネルギーへの転換を最終目標としながらも、移行期間は原発や天然ガスを一定の条件下で活用する。供給不安や経済への悪影響を回避し、エネルギー転換を円滑に進める現実的な判断である。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK106AG0Q2A210C2000000/
では、経済産業省の考えはどうなのか?HPには「将来の低減を目指しつつ安全性を高める」と書かれている。
2030年のエネルギーの将来像を定めた「エネルギー基本計画」では、今後、原発依存度は可能な限り低減させていくということがうたわれています。そのために、再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大はもちろん、火力発電所を効率化して温室効果ガス排出を抑えつつ発電量を増やす取組、また省エネルギーをさらに追求して電力需要量を減らすなどの取組が進められています。
しかし、これらの技術の確立にはどうしても時間がかかります。たとえば、再エネは天候の影響で発電量が変動しやすいという弱点がありますが、より優れた発電・蓄電技術の研究に官民をあげて取り組んでいるものの、現時点では、その弱点は克服されているとはいえません。こうしたこともあり、依存度を低減していくものの、原発をゼロにしてしまうことはできません。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/nuclear/shinkijun.html
現時点で再エネの弱点は克服されていないため、主電力になりえないので、それまでの移行期間は原発の安全性を高め運転していくとあり、EUの今回の方針と同じである。
日本維新の会の音喜多駿議員も「「脱炭素」と「脱原発」の両立はまず不可能」と指摘している。
重要な方針。「脱炭素」と「脱原発」の両立はまず不可能であり、現実に立脚したエネルギー政策を日本も進めていくべきです。既存原発はフェードアウトしながら、新型原子炉の開発・実用化を。 #NewsPicks https://t.co/z9ZPFdOxfX
— 音喜多 駿(日本維新の会 政調会長・参議院議員) (@otokita) January 1, 2022
もちろん将来的には再エネが主力となるのだろうが、それまでの移行期間に安価で安定した供給を行い、尚且つ脱炭素に近づけるにはどうすればいいかを考えればどちらの社説が現実的か理解できるだろう。