「国葬は法的根拠はない」「閣議決定したのが問題」⇒閣議決定が法的根拠では?
「選挙ギャルズ」なる団体が安倍元総理の国葬や改憲に反対するパレードを東京都内で行ったと東京新聞が報じた。
メンバーは取材に応じ「国民の意見に耳を傾けず、国会の議論も経ずに国葬を決定した。民主的でないやり方は信頼できない」「コロナ禍で格差が拡大したのに、手を打たなかった安倍元首相が神格化されてしまう」と語ったようだ。
政治に関心のある若者でつくる「選挙ギャルズ」が20日、安倍晋三元首相の国葬や改憲に反対するパレードを東京都内で行った。インスタグラムなどの交流サイト(SNS)で呼びかけ、約110人が参加。「国葬うちらは求めていない」などと訴えながら、日比谷公園から日本橋まで約2キロを行進した。
選挙ギャルズは5月末、地方選挙のボランティア活動を通じて知り合った大学生や会社員ら平均年齢21歳の10人が結成。この日は「ラブ&ピース・パレード」と称し、軽快な音楽に合わせて「うちらは求めてない国葬」「返せようちらの民主主義」と声を上げた。「国葬に反対」「憲法改悪マジ反対」など自作のプラカードを掲げて歩いた。
メンバーの1人は取材に「国民の意見に耳を傾けず、国会の議論も経ずに国葬を決定した。民主的でないやり方は信頼できない」と話した。パレードに参加した都内の女性会社員(24)は「コロナ禍で格差が拡大したのに、手を打たなかった安倍元首相が神格化されてしまう」と懸念を示した。パレードには野党の国会議員4人も加わった。
閣議決定が民主的なやり方ではないそうだ。
共産党の小池晃書記局長も同じことを言っていた。
日本共産党の小池晃書記局長は25日、国会内で記者会見し、政府が閣議決定した安倍晋三元首相の国葬問題について問われ、最大の問題は安倍政治を賛美礼賛し国民に弔意を強制することにつながることだと述べた上で、「法的根拠がなく、国会審議もなしに閣議決定で行うということは、民主主義を踏みにじるやり方だ」と厳しく批判しました。
また、サンデーモーニングに出演した谷口真由美氏も同様な意見を述べていたようだが、藤原かずえ氏が「政府の閣議決定が国葬儀の法的根拠です」と反論していた。
サンモニ谷口真由美氏
国葬は法的根拠はない。それを閣議決定したのが問題だ→何か大きな勘違いをしていると思いますが、政府の閣議決定が国葬儀の法的根拠です。「国の儀式」は法に定められている内閣の職務です
— 藤原かずえ (@kazue_fgeewara) August 21, 2022
谷口真由美氏
安倍元総理は何をしたのかキッチリと検証する必要がある。法的な根拠を覆してまでやる必要があるか、相応しい人物か検証が必要だ「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」というのが岸田首相が発表した国葬儀の根拠です。卑劣な論点歪曲は厳に慎んで下さい
— 藤原かずえ (@kazue_fgeewara) August 21, 2022
そのとおりだ。まず、メディアが閣議決定が何たるかを国民に広めないからこのような意見が横行する。
では、閣議決定についてみてみよう。
内閣の機能
内閣が、憲法のほか各種法令に定められた職権を行い、その職権を行うのは、閣議によるものとされている(内閣法第4条)。中略
閣議
内閣は、国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣によって構成される合議体(内閣法第2条)であるから、その意思決定を行うに当たっては全大臣の合議、すなわち閣議によることとなっている(第4条)。中略
(3) 閣議付議案件
閣議に付議される案件は、憲法、法律等により内閣の職権とされているもの(いわゆる必要的付議事項)が多いが、その他にも、特に法令上の根拠がなくとも行政府内で一定の方針を確定しておくための、いわゆる任意的付議事項もある。これらが一般案件、法律・条約の公布、法律案、政令及び人事等の項目に区分されて処理される。
一般案件とは、国政に関する基本的重要事項等であって内閣として意思決定を行うことが必要なものをいう。
内閣法では、閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。(第4条第2項)と規定し、また、各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる(第4条第3項)と規定しており、この規定に基づき、各主任の大臣が内閣総理大臣に閣議を求める手続きをする。これを「閣議請議」という。
また、閣議に付議される案件は、その内容により、「閣議決定」、「閣議了解」、「閣議報告」として処理される。
「閣議決定」は、合議体である内閣の意思を決定するものについて行われる。
「閣議了解」は、本来、ある主任の大臣の権限により決定し得る事項に属するものであるが、事柄の重要性にかんがみ、他の国務大臣の意向をも徴することが適当と判断されるものについて行われる。
「閣議報告」は、主要な審議会の答申等を閣議に披露するような場合等に行われる。(4) 閣議の運営
内閣法には、閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する(第4条第2項)という規定が置かれているだけで、その他については特段の規定はない。具体的な運営方法は、長年の慣行により行われている。
明治23年2月4日の閣議順序ヲ定ムルノ件の閣議決定によれば…通常ノ囘議書類ハ書記官ヲシテ之ヲ朗讀セシメ…と定められていた。
議事の進行・整理等は、主宰者たる内閣総理大臣の意を受けて、内閣官房長官が行う。案件の説明は、陪席者である政務担当の内閣官房副長官から行われる。
閣議の議決は、多数決の方式等を採用せず、全員一致によることとされている。これは、内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う(内閣法第1条第2項)ことに基づくものである。
閣議で結論が得られた案件については、各国務大臣が閣議書に署名(花押)をし、意見の一致したことを確認する。
そして、内閣府設置法の第4条(所掌事務)第3項第33号には「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)」(参考)との規定があり、「国の儀式」を内閣の判断で行うことができる。
これで見てもわかるように、閣議決定自体が法的根拠なのだ。
実際に「東日本大震災十周年追悼式」も政府主催で行われた。これも閣議決定だ。(参考)「全国戦没者追悼式」の開催も同じ。(参考)
そして、反対派の多くの人が勘違いしているのが、国葬=お葬式と捉えていることだ。安倍元総理の葬儀はもうすでに済んでいる。岸田総理が根拠に示した「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」のと、海外などから非常に多数の弔意が寄せられていることに対して、国が主催してセレモニーを開催するということなのだ。「東日本大震災十周年追悼式」も「全国戦没者追悼式」も、同じくセレモニーだ。ゆえに神格化でも全国民に弔意を強制するわけでもないと考える。
そのことはメディアが率先して国民に周知させなければいけないのだが、残念ながら、サンデーモーニングなどのようなワイドショーが誤った認識を視聴者に与えているのが現状だ。冒頭で紹介した「選挙ギャルズ」についても、彼女らも悪気があって行動したわけではないと思う。メディアや反対野党から歪められた認識に影響を受けただけだと思う。
コメンテーターの感想を述べさせるのは一向にかまわないが、閣議決定とは何なのか、内閣の役割は何なのか、国葬とは何なのかをしっかり紹介したうえで語らせるべきだ。あとは視聴者がコメンテーターの意見に賛同するか「この人何言っているの?」と思われるかは視聴者の判断に委ねればいい。