海保巡視船の約半数が年度末で耐用年数超え?
海上保安庁の、沿岸警備や海難救助に当たる巡視艇の約半数が今年度末に耐用年数を超える見込みであることを産経新聞が報じた。
連日、中国船がうろつく尖閣周辺で活動している巡視船も、2割近くが対応年数を超えるという。
決して昨日今日分かったことではなく、対応したくとも予算不足で後回しにされてきた背景があるようだ。海保は低予算で延命措置を施してきたようだ。
令和5年度以降の防衛力の抜本的強化に合わせて予算の増額が検討されている海上保安庁で、沿岸警備や海難救助に当たる巡視艇の約半数が今年度末に耐用年数を超える見込みであることが25日、分かった。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺など外洋で活動する巡視船も老朽化が顕著で、2割近くが耐用年数を超える見込み。限られた予算の中、船艇の退役延長で窮状をしのいでいるのが現状だ。
比較的大型の巡視船や、小型の巡視艇の耐用年数は20~25年。領海や漁業権益が認められる海域が拡大した昭和50年代に集中的に新造され、平成12年ごろから更新時期を迎えた。就役から30年以上が経過した船艇もあり、綱渡りの運用が続いている。
関係者によると、令和4年度末に巡視艇239隻のうち115隻(48・1%)が耐用年数を経過する。巡視船は145隻のうち26隻(17・9%)が超過。5年度末には147隻のうち32隻(21・7%)が耐用年数を超える見込みという。
背景には、尖閣周辺で領海警備に当たる巡視船の増強などが優先され、代替更新が後回しにされた事情がある。海保は耐用年数を超えた巡視船を対象に大規模修繕を実施し、15年程度の延命を図ってきた。
だが、平成25、26年に修繕された尖閣専従のヘリコプター搭載型巡視船「うるま」(昭和55年竣工=しゅんこう)が昨年1月、任務中に故障、一時航行不能に陥っており、代替船の新造は喫緊の課題となっている。
国境の最前線で日本の海域を守る海上保安庁の重要性が増す中、巡視船艇の老朽化が進んでいる実態が明らかになった。令和5年度以降の防衛力の抜本的強化に合わせて海保予算の増額も検討されているが、海上警察機能の強化は急務だ。
「予算が増える分にはウエルカム(歓迎)だ」
政府が北大西洋条約機構(NATO)の国防費基準である対国内総生産(GDP)比2%を事実上の目標とし、海保予算を安全保障関連経費に算入する方針であることについて、海保幹部はこう打ち明ける。国土交通省の枠組みの中では予算に限りがあり、NATO基準の安保関連経費に算入するメリットは大きいと考えられるためだ。
大型巡視船の建造には1隻200億円程度かかるが、海保予算は令和4年度当初と3年度補正で計2618億円。老朽船の代替新造費として計上されたのは約120億円だった。
中国公船の領海侵入が相次ぐ尖閣諸島周辺の海域で、海保は40ミリ機関砲を装備した高速高機能大型巡視船など最新鋭の船隊を配備。中国側を上回る勢力で対応してきた。一方、中国側は海軍艦を海警局に移管するなど海軍との一体化を進め、攻勢を強めている。
NATO基準は「軍の指揮下で直接行動できる」などと準軍事機関に限定している。そもそも法執行機関である海保は、海保法25条で軍事的な任務に就くことを明確に否定しており、NATO基準には該当しない。だが、自衛隊法80条は、有事の際には防衛相が海保を統制下に置けると規定。防衛相が海保を統制する手順を定める要領を策定するなどしてNATO基準との整合性は取れると政府は判断しているとされる。
元海上保安監の伊藤裕康氏は「国の総合的な安全保障の枠組みでの算入は合理的だが、国防の予算への算入は海保の性質・機能に鑑みると一貫性に欠け、より慎重な議論が必要だ」との考えを示した。
これは海保の上部組織である国交省の怠慢と言わざるを得ない。
ものを大事に使うのは良いことだが、それは時と場合だ。不測の事態があってからでは遅すぎる。自衛隊艦にしても、海保の巡視船にしても、常に100%の行動がとれるものでないと、乗船している隊員の生命にかかわることだ。
こんなことで、今後、中国相手にまともに監視活動ができるか心配だ。