ポンペオ氏回顧録で、金正恩総書記「中国人は噓つきだ」「(在韓米軍について)中国を牽制するために必要だ」「中国は、朝鮮半島をチベットやウイグルのように扱えるよう、米国を撤収させたがっている」
産経新聞が非常に興味深い、面白い記事を配信した。
米国のポンペオ前国務長官が出版した回顧録によると、北朝鮮の金正恩書記長が2018年の米朝交渉(当時朝鮮労働党委員長)で、「中国人は噓つきだ」「(在韓米軍について)中国を牽制するために必要だ」「中国は、朝鮮半島をチベットやウイグルのように扱えるよう、米国を撤収させたがっている」などの発言をしていたという。
回顧録では、金委員長が「ずっと私を殺そうとしてきたのを知っている」と米国の〝暗殺計画〟に触れ、ポンペオ氏が「今もそうですよ」と軽口をたたいたエピソードも紹介されているという。
北朝鮮の非核化に向けた2018年の米朝交渉当時、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長(現・総書記)が在韓米軍について「中国を牽制(けんせい)するために必要だ」とする趣旨の発言をしていたことが明らかになった。米国のポンペオ前国務長官が、24日に出版した回顧録に当時のやり取りを記載した。
北朝鮮はこれまで、米韓軍事演習への対抗措置としてミサイル発射を繰り返すなど、在韓米軍への敵意をあらわにしてきた。ポンペオ氏の証言からは、表向きには中国との友好関係を強調しつつ、2大国間で「バランス外交」を図る北朝鮮の思惑が浮かびあがった。
米中央情報局(CIA)長官だったポンペオ氏は18年春、当時のトランプ大統領の特使として極秘に訪朝、正恩氏と面会した。回顧録によると、ポンペオ氏が「中国は以前から『米軍が韓国から撤収すれば正恩氏が喜ぶ』と話している」と述べたところ、正恩氏は「中国人は噓つきだ」と反論。「中国は、朝鮮半島をチベットやウイグルのように扱えるよう、米国を撤収させたがっている」と指摘した上で、中国の半島進出を防ぐため米軍の駐留が必要だと述べたという。
在韓米軍をめぐっては、正恩氏の父、金正日(ジョンイル)総書記も「南北統一後も、地域の勢力均衡のため在韓米軍が必要だ」との認識を示し、00年の南北首脳会談で韓国側に伝えたと、複数の韓国元高官が証言している。
回顧録では、正恩氏が「ずっと私を殺そうとしてきたのを知っている」と米国の〝暗殺計画〟に触れ、ポンペオ氏が「今もそうですよ」と軽口をたたいたエピソードも紹介。トランプ氏がSNS(交流サイト)を通じ正恩氏を「リトル・ロケットマン」と揶揄(やゆ)したことについて、正恩氏も「ロケットマンはいいがリトルはよくない」と冗談を言ったという。
ポンペオ氏は、19年6月に軍事境界線の板門店で行われた3回目の米朝首脳会談にも言及。現地では会談の前後に韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領(当時)が加わり3人で立ち話をする形式がとられたが、事前協議では北朝鮮が文氏の関与を拒む一方、文氏はポンペオ氏に数回直接電話をかけ、同席を求めたという。ポンペオ氏は、正恩氏が「文氏に割く時間も、敬意も持たなかった」と振り返った。
これが事実なら、外交の天才と言われた文在寅前大統領(日本では、外交の天災、害交の天才だと思われている)など足元にも及ばない、したたかな外交をしていたことになる。
この記事を見て、まさか、裏では仲がそれほど悪くなかったのか?と考えさせられてしまった。そこら辺のことは定かでないので深読みはこれ以上はしないとして、率直に感じたのが、これが世界の外交なのかとあらためて思わされた。この記事をそのまま信用すれば、北朝鮮は、表面上は中国と手をつないでいても、裏では中国に侵略されないように備えているということになる。もちろんその逆も考えられる。「実際は中国に対してはこう思っているんですよ」と訴えて、米国から必要以上に睨まれないようにしたとも考えられる。いずれにしても日本の外交も、こういうしたたかさについては見習うべきところがあるのではないだろうか。