
令和のコメ騒動に学んだ経産省、石油危機で見せた「異例の先手」とその劇薬
中東情勢の緊迫化を機に、ガソリンに加えシンナーや潤滑油といった重要物資にまで「流通の目詰まり」が波及した。これに対し経済産業省は、メーカーから現場へ物資を直接届ける「直接販売(直販)スキーム」を連発。この異例の先手対応の背景には、日本中を混乱させた「令和のコメ騒動」の苦い教訓がある。
正論では防げない「心理的パニック」
過去のコメ不足の際、政府は「国内に総量(在庫)はある」と正論を繰り返したが、スーパーの棚が空という現実を前に国民の不安は暴走、買いだめが加速した。
今回の石油製品でも構造は酷似していた。マクロで物資は足りているにもかかわらず、「先行きへの不安」から一部の流通業者や需要家が過剰発注に走り、局所的な品薄を招いた。政府は「総量はある」という説明だけでは現場の不安を摘めないという、心理的パニックの病理を深く学んでいた。
先手で投入された「バイパス構造」
今回の対応で評価すべきは、4月の燃料油を皮切りに、わずか数ヶ月でシンナー主原料や潤滑油へと直販スキームを矢継ぎ矢に投入した即応性だ。
多重卸構造をスキップするこの仕組みは、コメ不足の末期に導入された直販支援のノウハウを、危機が深刻化する前の「先手」として組織的に適用したものだ。「最悪でも直販で手に入る」という確証は、需要家への強力な市場鎮静剤となった。特に石油製品は危険物ゆえに「無限に抱え込めない」という物理的制約もあり、アナウンスメント効果はコメの時以上に機能した。
試される有事の「出口戦略」
流通の目詰まりに対し、国が市場へ直接介入した今回の石油対策は、今後の有事における物資安定供給の強力なケーススタディとなるだろう。
しかし、直販スキームは既存の流通網を一時的に迂回する「緊急避難的な劇薬」に過ぎない。品薄不安が解消に向かった後、既存の商習慣との摩擦を避けつつ、いかに通常モードへソフトランディングさせるか。教訓を活かした「迅速な導入」の成否は、今後の「出口戦略」の鮮やかさによって最終的に担保される。
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