米シンクタンク、中国のTPP加盟申請について「中国を信じるな」
米シンクタンクが中国のTPP加盟申請について「中国を信じるな」という主旨で加盟国に警告をしたということだ。
9月16日、中国商務部はTPPへの加盟を公式申請した。
中国はここ20年間、WTO(世界貿易機関)加盟国として相当な経済的利得を得てきたが、今や巨大な多国間FTA(自由貿易協定)メカニズムを通じて国際貿易秩序に影響力を行使しようとする動きをみせている。
代表的な例が「CPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に加入する」と去る9月16日に公式申請したことである。
CPTPPは、ドナルド・トランプ前米大統領が脱退を宣言したTPPを、日本を主軸とした11か国により再整備され発足した経済同盟体である。ジョー・バイデン米政権がCPTPPに対してあいまいな立場をとっている中、中国がその空席に座り主導するという意図が読みとれる。
このことについて米国の代表的なシンクタンクが「中国を信じるな」という主旨でCPTPP加盟国に警告をした。
10日、米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、この研究所のジョアンナ・シェルトン(Joanna Shelton)経済プログラム上級準会員は最近の論評で「中国のCPTPP加盟申請を懐疑的視点で見なければならない」と主張した。シェルトン氏はOECD(経済協力開発機構)の事務次長を務めた人物である。
シェルトン氏はまず、中国のCPTPP加盟申請がオーカス(AUKUS・米英豪の安保協議体)の発足発表から2日後のことだったという点をあげ「習近平中国国家主席の大胆な動きだ」と診断した。「米国と同盟国を分離しようとする明確な努力だ」ということである。
オーストラリアはすでにCPTPPの加盟国であり、英国は参加申請書を提出した国であるにもかかわらず、軍事的に敵対国である中国が彼らと経済同盟を結ぶということから、このような診断は決して無理のないものである。
シェルトン氏は「中国はCPTPP加盟申請書を提出した後、加盟国に自国の加盟のためのロビー活動をしている」と語った。具体的には、習主席が去る11月4日に上海で開かれた貿易関連行事で「中国の国営企業・産業補助金などの問題を、CPTPPの加入により論議する」と公言した点を例にあげた。シェルトン氏は「この時点でCPTPP加盟国は、このような習主席の提案に対し懐疑的にならなければならない」として、中国の「前科」を説明した。
シェルトン氏は「中国は2001年WTOに加盟する時『国営企業・産業補助金だけでなく、歪曲された貿易慣行を規制する』と約束していたが、きちんと守られることはなかった」と指摘した。
中国は「国営企業を通じた自国の産業育成・輸出補助金支給などをWTO規定にそって段階的に “廃止”する」としていたが、現在も順守されていない事例が多く、それが米国などと貿易戦争で常に衝突する要因となっている。シェルトン氏は「習主席の最近の公言が、(これまでとは)異なる結果をもたらすと期待する理由にはならない」とし「むしろ習主席は国営企業と民間企業に対する国家支援を2倍に増やしている」と指摘した。
またシェルトン氏は、中国の「メイドインチャイナ2025」プログラムをあげた。2025年までにAI(人口知能)・ロボット工学・航空などの先端産業を含めた10の戦略分野で世界1位になるという中国の青写真である。
シェルトン氏は「習主席が方向を転換すると信じ、国営企業・産業補助金などに対する厳格なCPTPPの規律を順守することを真剣に検討することは “空想的”だ」とし「習主席の目標は2049年の“中華民族の偉大な復興”であり、これは中国をここまで導いてきた中国独特の社会主義から脱皮するということではない」と強調した。
中国がCPTPPに加盟するためには、加盟国全ての同意を得なければならない。現在まで日本とオーストラリアが反対の立場をみせている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e9a581407192c0c9cce42ad5a69b9255215297d1
中国の加盟申請は米国が加盟国にいないことも理由のひとつではないだろうか。英国が申請したとはいえ、米国がいるといないでは中国に与えるプレッシャーは全然違ったはずだ。個人的には米シンクタンクもそこまで警告してくれるならバイデン大統領にTPP参加を促してくれればいいものをと思う。
一方、あれだけTPP参加を騒いでいた韓国だが、このところ音沙汰ないと思っていたら近くTPPへの加盟推進を発表するということだ(参考)。韓国に至っては我が物顔で日本のイチゴやシャインマスカットなどを栽培し、韓国産として海外に売り出しているうちは無駄だろう。最近の韓国の日本へのすり寄りは経済支援の他にTPP参加の目的もあるのかもしれない。