バイデン大統領がロシアへの追加制裁へ 大手金融機関も次々と撤退検討 ロシア国民の怒りはプーチン政権に向けられるのは必至
バイデン政権がロシアへの追加制裁の方針を打ち出すようだ。金融制裁や原油輸入禁止に続き、貿易上の優遇的地位を剝奪する検討に入ったようだ。
バイデン米大統領は11日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの追加制裁を発表する。欧米メディアによると、ロシアに認めている貿易上の優遇的地位を剝奪(はくだつ)する方針を打ち出す。ロシア産品に対する関税引き上げが容易になり、ロシアの貿易取引に痛手となる。ロシア主要銀行への金融制裁や原油輸入禁止に続く圧力強化で、ロシア経済の孤立化を進める狙いだ。
米ブルームバーグ通信は、バイデン米政権が、ほかの先進7カ国(G7)などとともにロシアの優遇撤廃に乗り出すと伝えた。
米議会では、輸入品に課す関税などに関する優遇措置を認めた「恒久的正常貿易関係」(PNTR)を、ロシアから剝奪する法案がすでに提出されている。法案は超党派の支持を集めており、バイデン政権は法案審議と連動して今回の追加制裁を進めるとみられる。
ソニーフィナンシャルグループ・シニアエコノミストの渡辺浩志氏はこう分析する。
米国とロシアの貿易額は280億ドルであり、米国の名目GDP(24兆ドル)の0.1%に過ぎません。貿易優遇を剥奪してロシアとの貿易がストップしたとしても、米国経済への影響はほとんどないでしょう。半面、米国が同盟国にも同様の対ロシア制裁を呼び掛ければ、世界貿易からロシアを締め出すことに繋がります。その場合、中国が対ロシア貿易のシェアを拡大すると思われます。ただし、あからさまなロシア支援を行えば、西側諸国の経済制裁の矛先が中国に向く可能性もあるため、中国は慎重に対応するでしょう。これまでの経済制裁により、ロシアは対外債務のデフォルトの危機に瀕し、国際金融市場から排除される可能性が高まっています。それに加えて世界貿易からも締め出されれば、ロシア経済は自給自足状態に陥ります。そうして困窮が極まれば、国民の不安とプーチン大統領に対する怒りは頂点に達すると思われます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/96048d678b5c2304992874510ee0552a685225e0/comments
国際弁護士の湯浅卓氏は次のようにコメント。
重要な記事だ。アメリカから観ると分かるのは、バイデン、アメリカ大統領の強い専門性だ。日本で呼ぶ『最恵国待遇』、米国で言う『恒久的正常貿易関係』とロシア問題の論点に関し、バイデン大統領は専門家中の専門家だ。専門性が高い上院議員として法律家としてこの領域での実務経験でバイデン氏の右に出る人物はいない、と言って過言でなく、議会をこの領域では、1人で引っ張ってきた本人だ。そのことは対ロシア制裁に乗ってこない中国とインドという経済スーパーパワーの両国にも有名だ。だから、今後議会の協力アクションは必要とは言え、バイデン大統領の強力なリーダーシップにG7やEUも加わることになるのは当然だから、中国とインドそれぞれへのインパクトも強烈と言える。ロシアは専門を大切にするエリート官僚国家として、バイデン大統領の専門性は当然認識しており、バイデン大統領としては粛粛と専門を中軸に経済制裁を強める自信に満ちている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/96048d678b5c2304992874510ee0552a685225e0/comments
また、金融業界にも動きがあった。ロイターは「ゴールドマンとJPモルガンがロシア事業撤退へ、米大手銀で初」と報じた。記事では米国以外でも撤退を検討している金融機関があることが報じられた。
他の米大手金融機関では、シティグループが9日、ロシアの個人向け事業をより限定すると表明。欧州勢では、オーストリアのライファイゼンバンク・インターナショナル(RBI)が撤退を検討していると関係筋が明らかにしている。
まさに四面楚歌の状況に陥りそうなロシアだ。国民の不満が高まり、プーチン政権に怒りの矛先が見けられるのは必至だ。国際社会を敵に回し、ロシア国民を敵に回し、この先プーチン大統領はどう乗り切るつもりだろうか。プーチン政権の幕を下ろすか、独裁者としてさらに強権を振るうしか道はないだろう。これが侵略を行った代償だ。プーチンを止められなかったクレムリンの責任も大きい。