橋下徹氏の「ウクライナの安全を守るための政治的妥協もある」に櫻井よしこ氏「どういうふうな政治的妥協をするんですか?ウクライナは絶対に領土を譲らず、ロシアは絶対に欲しいと言っている」
今週のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」もなかなか見ごたえがあった。先週の高市早苗政調会長と橋下徹氏のやり取りも面白かったが、今週もそれに負けないものだった。
そのなかでこのやり取りがネット上で話題となっている。
櫻井よしこ「例えば、日本が中国に攻め込まれ、私達が”最後まで戦う”という時に他の国に『妥協しなさい』と言われたらどうか」
橋下徹「安全を守る為に政治的な妥結もある」
櫻「ウクライナは絶対に領土を譲らず、ロシアは絶対に欲しい。現実的にどんな妥協するのか」
橋「………」
ノープラン😩 pic.twitter.com/6ja3lV4G4Z
— ピーチ太郎2nd (@PeachTjapan2) March 12, 2022
橋下氏は、現地の映像を指して「一部の国会議員とかが、ゲーム画面を見ているように『ウクライナなかなか抵抗している』って、そうじゃない。現実はこれだ」と指摘。「圧勝できればいいが、ウクライナの犠牲を考えたとき、NATOが入るぞと言う姿勢を示し、いきなり軍事介入とはいきませんから、NATOがロシアと政治的妥結をはかる努力をすべき」とした。
これに櫻井氏は、「もっと大きい円の中で見る必要がある。とりわけ日本は。プーチンが目指しているのは戦後体制の大転換で旧ソビエト連邦の復活ですよね。それを支えているのが中国で、ここでNATOと全面的な戦争になったときにお互いにもの凄く消耗し、核戦争にもつながりかねない」と指摘した。
そのうえで「そのときに世界全体がどうなるか。一番得をするのは中国。わたしたちの一番の脅威は中国ですよ。ウクライナにあらゆる支援を行いながら、しかし全体的に、5年10年先の世界戦略を考え、中国に絶対に得をさせない、中国的な価値観の勢力を伸ばさないことに重点を」と述べた。
櫻井氏は、橋下氏と論争になり、「プーチンがどこまで政治的妥結をするかどうか。彼はここで引いたら終わりですよね」。
橋下氏は現状を「犠牲を容認し、微々たる支援で止まっている」とし、「櫻井さんの考え方は、ウクライナをある意味犠牲にしながら、全体秩序を守っていくということになる」と指摘した。
櫻井氏は「ウクライナを犠牲にするとか、事の本質はそうではない。ウクライナが戦う姿勢を見せている。ゼレンスキーは諦めないと言っている。これはウクライナの国としての意思ですから、これを私たちがとやかく言うのはおかしい」と述べた。
橋下氏は「ウクライナの安全を守るための政治的妥協もある」と主張。櫻井氏は「ウクライナの意思を尊重することを第一に、どういうふうな政治的妥協をするんですか?ウクライナは領土を譲らないと言っている」と返した。
ネット上では櫻井氏に軍配が上がったという意見の方が大勢を占めていた。こんな意見が上がっていた。
彼はここで引いたら終わりですよね」
結局ここに尽きるんだろうと思う。
なにかと批判されている橋下氏だが、見方を変えると先週の高市氏の発言や今週の櫻井氏の発言も、橋下氏の持論があったからこそ引き出せたのではないかと思ってきた。そういう意味では、番組上この番組に限っては必要な主張なのかもしれない。
番組ではほかにも自民党の佐藤正久外交部長、立憲民主党の渡辺周議員、東京大学先端科学技術研究センター講師の小泉悠氏も出演していてこのようなやりとりがあった。
佐藤正久氏(自民党外交部会長):
気になっているのは、ロシアが中東、シリアから傭兵を送り込むという話。相当危険な兆候だ。粗っぽく市街戦に慣れているシリア兵となると、考えたくない状況が起きる可能性がある。元自衛官として考えると、ロシア兵は本心ではシリア兵とは一緒に戦いたくないと思う。誤算、士気の低下、補給の問題などもあり、ある意味、(ロシア軍が)追い込まれている部分もあるのかと思う。普通だったら、ロシア軍がシリア兵に応援を頼むというのは考えにくい。
小泉悠氏(東京大学先端科学技術研究センター講師):
ロシアがシリアの傭兵を動員しようとしている。ベラルーシ軍も動員しようとしているわけだ。ベラルーシ軍なんて5万人ほどしかいない。そのうち陸軍は1万数千人ほど。その程度の兵力に頼らざるをえないというのは、相当ロシア軍が攻勢の限界に達しつつあるのではないか。シリア傭兵の話に関しては、市街戦でものすごい損害が出ることはチェチェン戦争などでロシアは承知している。これから本格的に市街戦を始めるにあたり、あまりロシア兵に死者を出してはまずいと思っていると思う。今回の戦争はただでさえロシア国民からは不人気で、あまり戦死者を出すと国民から本格的に反発を食らう。そのため、非常に言い方は悪いが、死なせても惜しくない外国人兵士、しかも、公式に戦死数にカウントされない兵隊を集めようとしているのではないか。渡辺周氏(元防衛副大臣・立憲民主党衆院議員):
懸念するのは、シリアで使われた化学兵器、例えば、サリンのようなものを市街戦で使って大量虐殺をするのではないかということ。さすがにそこまで行った時には、NATOは人道支援という形で何らか次のステージに進むぞということをアナウンスしなければいけない。佐藤氏:
今、ウクライナ国民が連帯をして国際社会の支援のもとに一生懸命頑張っている。これは非常に尊いと思う。しかし、首都包囲作戦で、チェチェンでの絨毯爆撃のようなことも起きるかもしれない。その時に、NATO、特にヨーロッパは、見殺しにしていいのかという議論は絶対起きるはずだ。起きないとおかしい。そういう(介入の)姿勢を示すことで政治的妥結というものが次第に生まれてくる。橋下徹氏(元大阪府知事・元大阪市長・弁護士):
経済制裁が速く効果的にロシアに効くかは中国の態度ふるまいかんではないか。櫻井さんのような戦略は確かに正論、王道だ。経済的に追い詰めてプーチン政権を瓦解させる。これが一番だと思うが、これを早期にやってウクライナの人たちの犠牲をなるべく最小限にしようと思えば、中国をロシアから西側の方に引き込んでこなければいけない。櫻井さんはもう芯からの中国嫌いだから、絶対中国にお願いするなどということはやりたくないという気持ちはわかるが。櫻井よしこ氏(国家基本問題研究所理事長・ジャーナリスト):
橋下さん、あなたは、私の言ったことを二つ読み違えているので、それを訂正する。まず、ウクライナに対して経済制裁だけでプーチンを追い詰めるとは、私は言っていない。NATO、アメリカ、日本でさえも、日本はものすごい限界があるが、戦闘に役立つことをどんどんやっている。橋下氏:
中途半端だ。肝心なことはやらない。櫻井氏:
中途半端とあなたは言うが、今すごくやっている。橋下氏:
(NATOは)戦闘機送らないではないか。櫻井氏:
経済だけではない。それと、私が中国が嫌いだから中国に仲裁を頼まないと。私は嫌いとか、好きとかの感情論でこの話をしたことはないつもりだ。中国が嫌いだからではなく、中国に仲介を頼んでもよいことはないと思っているからだ。中国とロシアは本当に双子だ。価値観でも、やり方でも、人命を軽視するという意味においても、本当に双子だ。習近平にとってプーチンを全否定するということは、自分が今までやってきたこと、これからやろうとすることの全否定に繋がるから、仲介役になった途端に、まあ仲介できないと思うが、水面下でいかなる形でかロシアの意向に沿った形で、国際社会の目をごまかしながら、交渉して行くだろう。その先にできる国際社会は習近平やプーチンの価値観がどこかに色濃く滲んでいる社会になりかねない。それを私たちは許すことができないという意味で、中国には仲介の資格はない。中国が対ロシア経済制裁に力を貸すことは全くない。むしろ反対に西側の目をごまかしながら、ロシアを経済的に助けていく方向に着実に動いている。中国を嫌いも好きも全く関係なく、習近平体制が、共産主義の彼らが何を目指しているかを事実関係をもとにきちんと押さえて、中国には無理だねということを私は言っている。
橋下氏:
中国がロシアと組んだ時に、西側諸国は中国に二次制裁をやるかだ。イランへの制裁と同じように。ロシアと関係する中国企業、中国の取引全部を西側諸国が制裁かける覚悟があるかどうか。軍事力でNATOが介入すれば世界大戦になる。これは避けなければいけない。世界大戦ほどの犠牲を避けるということでも、それぐらいの覚悟がないとプーチン政権止まらない。世界大戦と同様になるくらいの経済的な打撃を西側諸国が覚悟を持たないと、プーチン政権は追い詰められない。中国に二次制裁やるなどと言ったらとんでもない経済の大混乱になるが、そこまでの覚悟はあるのか。そこまでの覚悟がないのであれば、NATOが軍事力を背景に交渉するのかの問題だ。二次制裁までやるべきだ。