ウクライナ軍、東部都市を奪回 ロシア軍は装備弾薬を残し敗走 喜ぶ市民
先週キーウ周辺の一部のロシア軍に後退する動きが報じられた。だが、ウクライナの攻勢は首都周辺だけではなかった。東部戦線でもウクライナ軍がロシア軍の手に落ちた都市を奪回したと報じられた。
トロスティアネッツ、ウクライナ、3月29日(AP)― ウクライナ軍は、3月1日にロシア軍の手に落ちた同国東部のトロスティアネッツを、ロシア軍から奪い返した。
AP通信の記者は3月28日、ロシア軍の敗走を喜ぶ市民のそばを、勝ち誇った兵士を満載して走るウクライナ軍の戦闘車両とは対象的に、放棄された陣地に散乱する破壊された戦車や自走砲、軍用車両、さらに遺棄された無数の弾薬箱などを目撃した。
複数の住民の証言では、ウクライナ軍の激しい攻撃を受けたロシア軍が敗走したという。
ウクライナ軍は各地の戦線でロシア軍を押し戻しており、米の軍事専門家は、ロシア軍の前進は止まったようだと指摘。その上で、ロシア軍は侵攻作戦の重点を、首都キーウ周辺の地上戦から、東部ドンバス地方の防衛戦に置き換えたのではないかと推測している。
親ロシア派武装勢力が実効支配するドンバス地方では、2014年のロシアによるクリミア半島併合以降今日まで、ウクライナ軍との武力衝突が続いている。
これでウクライナ軍の指揮は今以上に上がるだろう。ロシア軍の士気が下がり、各地でウクライナ軍が攻勢に出ているという報道が目立ちだした。ロシア軍の軍用車両や戦車をウクライナ軍が奪ったという報道もあった。
開戦当初はロシアもウクライナがこれほど抵抗するとは考えていなかっただろう。気が付けば多くの兵士を失い、膨大な戦費ばかりが浪費されている。英国の調査研究機関などがロシア軍の戦費は「1日最大3兆円」であると発表したことを読売新聞が報じた。
ロシアはウクライナ侵攻の戦費を公表していないが、巨費に上るとの指摘が相次いでいる。
英国の調査研究機関などは今月上旬、ロシアの戦費に関し「最初の4日間は1日あたり70億ドル(約8610億円)だった。5日目以降は200億~250億ドル(約2兆4600億~3兆750億円)に膨らんだ」と試算した。露政府の歳入は年間で25兆ルーブル(約31兆2500億円)程度だ。
ロシアの調査報道専門メディア「インサイダー」によると、ロシア軍が26日に発射した52発のミサイルの総額は推計3億4000万ドル(約418億円)だった。プーチン大統領は、ロシア軍が6日にウクライナ中部の空港に高価な長距離精密誘導弾8発を撃ち込んだことに激怒したとも報道された。
北大西洋条約機構(NATO)のジェームス・スタブリディス元欧州連合軍最高司令官は今月中旬、米通信社への寄稿で、プーチン氏は「国民の支持を失う前に金欠になるだろう」と皮肉った。
制裁はロシア軍の補給にも影響する。戦闘機などにはロシアへの輸出が禁じられた部品が使われている。ミサイルや戦闘機の製造に不可欠な半導体も禁輸対象となり入手が困難になった。
戦闘での損失状況を確認している軍事情報サイト「Oryx」によると、露軍は侵攻で戦車約300両など2000以上の兵器や装備品を失った。その数はウクライナ軍の損失の約4倍とされる。
これだけの戦費はまさに想定外だったと思う。一度戦線を下げ体制を整えると見たほうがいいだろう。
米国防総省のカービー報道官も、ロシア軍のキーウからの後退について「(キーウからの後退は)わずかな部隊だ。これは再配置で、真の撤退ではないと考える」「ウクライナの他の地域での大規模攻撃に備えるべきだ」(参考)と警戒を強めるべきだと述べていた。
こうなると怖いのは、やけくそになったプーチンが東部への大規模攻撃集中に切り替え、無差別大量虐殺に出るか、核や化学兵器を使用し出すかだ。