国際政治学者の細谷雄一教授「「ロシアもウクライナも両方悪い」という議論は適切ではない」
国際政治学者の細谷雄一教授が3月26日にツイートした内容が反響を呼んでいる。
細谷氏は「「ロシアもウクライナも両方悪い」という議論は適切ではない」と投稿。その理由について「ロシアの行動は、国連憲章2条4項の国際紛争解決のための武力行使を禁ずる国際法違反。ウクライナの行動は、同51条の個別的自衛権行使に基づくもの。国連総会も日本政府も、それに賛同」としていた。
なぜ「ロシアもウクライナも両方悪い」という議論が適切ではないのか。それは国際社会にもルールや規範があるから。ロシアの行動は、国連憲章2条4項の国際紛争解決のための武力行使を禁ずる国際法違反。ウクライナの行動は、同51条の個別的自衛権行使に基づくもの。国連総会も日本政府も、それに賛同。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
なぜ「ロシアもウクライナも両方悪い」という議論が適切ではないのか。それは国際社会にもルールや規範があるから。ロシアの行動は、国連憲章2条4項の国際紛争解決のための武力行使を禁ずる国際法違反。ウクライナの行動は、同51条の個別的自衛権行使に基づくもの。国連総会も日本政府も、それに賛同。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
あらゆる戦争が悪であると述べることは、正しいようでありながらも、20世紀の国際法と国際的規範の歩みを全否定すること。道徳的な高みになって、「あらゆる戦争は悪であってどちらが正しいというわけではない」と論じることは、20世紀の平和への努力を蹂躙すること。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
国際法を無視した侵略的な武力攻撃、さらには無差別な一般市民の殺戮は悪であるが、そのような侵略から国民の生命を守るために自衛的措置をとる行動は、合法であり正当な行動であるということを理解してほしい。だからウクライナの行動が国際的に支持され、国際社会から支援されている。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
これらの前提を知らずしてか、無視してか、「ロシアもウクライナも、戦争をしているのはどちらも悪いのであって、片方を支持するべきではない」というのは、国際的には全く共感されず、単なる国際法の無知とされてしまう。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
もちろんより重大な問題として、常任理事国が拒否権を持ち、ロシアの妨害で国連安保理決議が採択されないこと。だからこそ、ゼレンスキー大統領は日本での演説で、国連改革の必要を解き、イギリス政府は国連安保理からのロシアの除外を求めている。現状の国際社会は完璧ではないが、法と規範も存在。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
とはいえ、もちろん、国際法は「白と黒」で分かれているのではなく、多くのグレーゾーンがある。また、冷戦後の30年間で、アメリカが国際法や国際的な規範を踏み躙るような行動を幾度もこない、アメリカへの不信感や、国際法の信頼性が大きく後退したのも事実だと思う。その隙間をついたのがプーチン。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
なので今回のロシアの行動を放置すると、国際法や国際的規範に基づいた国際秩序が瓦解すると思う。そうなれば、「法の支配」ではなくて核兵器の数によって国際紛争が解決される時代へ。アメリカ、ロシア、中国がこれまで以上優位に立ち、日本の主張は悉く無視され主権と利益が侵害されるはず。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
言い換えれば、アメリカもロシアも中国も自らの圧倒的な数の核戦力に基づく軍事力で自国の主権や利益を守れるが、そうでない中小国はウクライナの例のように、自国の主権や利益を守れなくなる。そうなれば、世界中が核開発競争になる。そして平和国家の日本の主権と利益は蹂躙され続けるだろう。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
結論。なので私は、情緒的及び感覚的に「戦争はどちらも悪い」と論じることは適切ではないと考えている。また、テレビなどのメディアに携わる方、発信する方も、そのような国際法上の武力行使の合法性をぜひ理解した上で主張してほしいと思う。言論の自由のある日本では多様な主張が可能だが。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 26, 2022
細谷氏の投稿には「おっしゃってること全てに同感です」「明確で非常にわかりやすい内容でしたありがとうございます」といったコメントが寄せられる一方、納得のいっていない意見も散見された。
テレビを見ていてもジャーナリストやコメンテーターなどが「ロシアが悪いのは当然だが、ウクライナも悪い」といった意見があり、中には「ウクライナは降伏すべき」といった意見もある。そういった方々への指摘だろう。
細谷 雄一(ほそや ゆういち、1971年8月13日[1] – )は、日本の国際政治学者。慶應義塾大学法学部教授。専門は、国際政治史・イギリス外交史。博士(法学)(慶應義塾大学・2000年)。
2002年、『戦後国際秩序とイギリス外交』でサントリー学芸賞を受賞。2010年、『外交による平和』で政治研究櫻田会奨励賞受賞、また『倫理的な戦争』で読売・吉野作造賞受賞。
外務省外交記録公開促進員会委員(2010年ー16年)。また、安倍晋三政権において、「安全保障と防衛力に関する懇談会」委員(2013年)、および「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」委員(2013年-14年)、国家安全保障局顧問(2014年-16年)を歴任。自民党「歴史を学び、未来を考える本部」アドバイザー(2015年-18年)[10]。また、2020年から経済産業省産業構造審議会通商・貿易分科会委員(2021年-)。また、菅義偉政権で「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議メンバー(2021年)[11]。
2017年から国際政治チャンネルに池内恵、篠田英朗、田村あゆち、三浦瑠麗と共にレギュラーとして出演。
2020年、ワシントンに拠点を置くシンクタンク戦略国際問題研究所 (CSIS) がまとめた報告書「日本における中国の影響力」[12]に、「中国は日本に影響を及ぼすため間接的な手法を採用している。例えば沖縄独立と米軍撤退を追求するため沖縄の新聞に資金提供し、影響を及ぼすことを通じて沖縄の運動にも影響を及ぼすような秘匿ルートがある」という細谷の発言が引用[12]された。沖縄タイムスの取材に対し、細谷は「誤解を招きかねない表現になった。中国が沖縄の新聞に資金提供しているという根拠や認識はない」[13][14]と語った。後日、報告書の「沖縄の新聞」「資金提供」の文言が削除された[15]。
現在、日本国際政治学会、日本EU学会(理事)、日本政治学会、日本国際安全保障学会(理事)に所属。グレートブリテン・ササカワ財団理事。
引用元 Wikipedia 細谷雄一