中国海軍の空母「遼寧」など艦艇8隻が沖縄本島・宮古島間を通過、昨年12月以来 防衛省「緊張感をもって情報収集等を実施」
中国海軍の空母など8隻が2日に沖縄本島と宮古島の間を通過し、東シナ海から太平洋に出たのが確認されたと防衛省が発表した。日本の領海への侵入は確認されなかったようだ。中国の空母がこの海域を通過したのは昨年12以来で、防衛省は引き続き緊張感をもって情報収集等を実施すると発表。
防衛省は2日、中国海軍の空母「遼寧」など艦艇8隻が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を抜けて太平洋へ出たと発表した。遼寧の確認は昨年12月以来で今回は艦載ヘリコプターの発着艦が確認された。
海上自衛隊は1日正午ごろ、長崎・男女群島の西約350キロの海域を南へ進む遼寧と、駆逐艦1隻、ミサイル駆逐艦3隻、高速戦闘支援艦1隻の計6隻を確認した。
同日午後6時ごろには沖縄本島の北西約480キロの海域でフリゲート艦1隻を、2日午前6時ごろには、沖縄県の尖閣諸島・大正島の北約160キロで別のミサイル駆逐艦1隻をそれぞれ確認。その後、海自はこれら計8隻の中国海軍艦艇が宮古海峡を南下し、太平洋へ抜けたことを確認した。
また、海自は東シナ海で遼寧の甲板上で艦載ヘリの発着艦を確認した。昨年12月に遼寧が宮古海峡を往復した際には、艦載機の発着艦が確認されていた。
遼寧の動きに対し、海自は、事実上の空母化を進める「いずも」(横須賀)と、P1哨戒機やP3C哨戒機が警戒監視に当たった。
中国海軍は3日、遼寧などの艦隊が西太平洋で実戦的な訓練をこのほど実施したと発表した。
遼寧がこの海域を通過するのは昨年12月以来10回目。艦載ヘリの発着も確認した。領海侵入はなかった。
これに対し、防衛省は「引き続き緊張感をもって情報収集等を実施します」とツイート。
5/2、海上自衛隊は、中国海軍空母「遼寧」以下8隻が沖縄本島と宮古島との間の海域を東シナ海から太平洋へ向けて航行したことを確認しました。今般の活動は、遠方の海空域での作戦遂行能力の向上を企図した活動の一環である可能性があるところ、引き続き緊張感をもって情報収集等を実施します。 https://t.co/NM3B2vgObw
— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) May 3, 2022
岸信夫防衛相は、昨年12月に中国空母が宮古島を通過した際にも「近年、中国の活動内容に質的な向上がみられ、実戦的な統合作戦遂行能力の向上もみられる。その動向について、引き続き重大な関心を持って注視していく」と記者会見で述べていた。
Q:最近相次いでおります中国海軍の空母「遼寧」のですね、沖縄近海での艦船機の発着艦について、まず大臣の受け止めをお願いいたします。
A:今般の空母「遼寧」及び中国艦艇及び艦載機による活動はですね、非常に急速に活発化しております。また、わが国周辺海空域においては、何らかの訓練と思われる活動や情報収集活動を行っていると考えられる艦艇や航空機が多数確認をされているところです。近年、中国軍の活動内容に質的な向上がみられ、また、実戦的な統合作戦遂行能力の向上の動きもみられるところで、防衛省・自衛隊としては、引き続き、わが国周辺海空域における中国軍の動向について、重大な関心をもって注視してまいりたいと考えております。
また、岸防衛相は産経新聞の単独インタビューで、海洋国家として必要な備えを次のように語っていた。
--日本が海洋国家であることを踏まえ、どのような備えが必要か
「日本周辺には強大な軍事力が集中しており、その強化や活発化の傾向が顕著だ。多くの島嶼(とうしょ)部、広大な排他的経済水域(EEZ)に、守るべき国民、領土、資源が広く存在する。海上、航空優勢の確保のため安保環境に即した部隊配置と状況に応じた機動展開が重要。それらの確保が困難でも、(相手のミサイルなどの射程圏に入らない)脅威圏外から(自衛隊のミサイルなどで)相手部隊の接近を阻止できるようにしておくことだ」
中国は、南太平洋の 島嶼国への関与を強めていて、つい先日もソロモン諸島と安全保障協力に関する協定を締結した。産経新聞は社説で「ソロモン政府が要請すれば中国が海軍艦艇を寄港させたり、軍の部隊や警察を派遣したりできる内容とされる。この協定をてこに、中国がソロモンの軍事拠点化を進めかねない。地域の安全保障にとって深刻なリスクである。ソロモン政府は協定を再考してもらいたい」と主張。(参考)
太平洋での活動がますます活発化する中国に対し、岸防衛省や防衛省が危機感を持って対応にあたっているのだがわかる。しかし、この危機感は政府として共通の認識を持たなくてはいけない。