【中国の南太平洋進出の計画が着々と進む】南太平洋の10か国に対し、安全保障や経済面での協力を大幅に拡大する計画を提案
中国の南太平洋進出の計画が着々と進んでいる。中国がソロモン諸島と安全保障協定締結をしたことで日米豪は慌てて危機感を現したのだが、中国はさらにその先へ進もうとしている。
中国は南太平洋の10か国に対し、安全保障や経済面での協力を大幅に拡大する計画を提案したという。
中国が南太平洋の10か国に対し、安全保障や経済面での協力を大幅に拡大する計画を提案したことが25日、AFPが入手した文書で明らかになった。当該国の首脳からは、中国の影響力拡大を懸念する声も上がっている。
入手した文書は、「包括的発展の展望」と題された協定の草案と5か年計画。中国の王毅(Wang Yi)外相が26日に開始する太平洋諸国歴訪で各国と協議し、30日にフィジーで開く外相会合での承認を目指すとみられる。
中国は10か国に対し、数百万ドル(数億円)規模の援助、自由貿易協定の展望、14億人を抱える中国市場への参入機会提供を提案。見返りとして、各国の警察の訓練、サイバー安全保障への関与、政治的関係の拡大、海洋地図の作成、天然資源の利用拡大を求めている。
南太平洋は1900年代から米国が強い影響力を有しているが、近年は米中の覇権争いが激化。中国は軍事的、政治的、経済的な足がかりの強化を目指しているものの、大きな進展には至っていない。
今回明らかになった一連の協定について、南太平洋諸国では警戒感が広まっている。ミクロネシア連邦のデービッド・パニュエロ(David Panuelo)大統領は他の当事国首脳に宛てた書簡で、中国側の提案は一見すると魅力的だが、中国に対し「われわれの地域への参入と支配」を許すものだと警告。提案は「不誠実」であり、中国による政治介入、主要産業の支配、通話や電子メールの大量監視が可能になると指摘した。
ミクロネシア連邦は米国と自由連合盟約(コンパクト)を締結しており、南太平洋諸国の中でも米国と特に緊密な関係にある。一方で他の国々は、中国の提案を有益と見なす可能性もある。
10か国のうち、ソロモン諸島はすでに中国との安全保障協定締約に向けた交渉を秘密裏に進めていたことが明らかになっている。流出した協定の草案には、オーストラリアから2000キロ足らずのソロモン諸島での中国海軍駐留につながる可能性もある条項も含まれていた。
中国による今回の提案は、ソロモン諸島との安保協定の主要要素を他の9か国に事実上拡大するもので、米国、オーストラリア、ニュージーランドの懸念を生むことは必至だ。
中国は一対一路でかねてから途上国に資金援助を行い抱きかかえてきた。近年では太平洋諸島における中国の好感度も上昇の一途をたどっているという。
米国務省も、中国の王毅外相による太平洋島しょ国の歴訪について、「不透明な形で各国と交渉を進め、協定を結ぶ可能性がある」と懸念を表明したが、それに対して対応策を示していないのが現実だ。
うがった見方をすれば、国際世論がウクライナに注目している裏で、中国は太平洋諸島の抱きかかえに本格的に乗り出したように思える。南太平洋諸島を中国が抑えれば、日米豪の中間に中国が軍事拠点を構えることになる。特に米国がそれだけは回避したいだろうが、着々と準備を進めてきた中国の計画に対抗策はあるのだろうか。