次期駐日韓国大使「まずは財団を作るべき」「財団を作るのに日本から一切1ウォンも受け取ってはならないと考える」
尹徳敏次期駐日韓国大使が、元徴用工問題の解決策として韓国政府内で浮上している財団設立について、「まずは財団を作るべき」「財団を作るのに日本から一切1ウォンも受け取ってはならないと考える」と、韓国政府と韓国企業が基金を出して財団を作り被害者に補償すべきと語ったという。
日韓請求権協定で解決済みの事案で、当然のことを言っているにすぎないのだが、なぜか韓国の外交官にもこんな人物が現れたかと思ってしまった。
次期駐日大使に内定した尹徳敏(ユン・ドクミン)氏が2019年に強制動員被害者に対する賠償問題解決策について語った内容が注目されている。
尹氏は2019年の「非常国民会議水曜特講」で強制動員被害者に向け、まずは財団を作るべきと話した。
尹氏は「財団を作るのに日本から一切1ウォンも受け取ってはならないと考える」と話した。韓国政府と韓国企業が基金を出して財団を作り被害者に補償すべきということだ。
尹氏は大法院(最高裁)判決を尊重すべきとしながらも「これ以上これを持って裁判で何かをできないよう特別法を作らなければならない」と主張した。ただ「財団設立において日本企業が自発的に参加するならばそれは歓迎する」と言及した。
尹氏は強制動員解決策で必要な3つの原則を明らかにした。まずただ1ウォンも日本から受け取らないという精神、2番目は請求権は1965年に終結、3番目は大法院判決は尊重だ。韓国放送局JTBCは今後尹氏が駐日韓国大使になればこうした原則の下で強制動員問題に臨むとみられると報道した。
一方、日本製鉄、三菱重工業、不二越を相手取った強制動員訴訟被害者支援団と被害者代理人は7月4日にソウルの外交部庁舎前で記者会見を行い、「強制動員問題は被害者と加害企業が訴訟を繰り広げた事案で大法院判決もやはり日本企業に対するもの。被害者と日本企業が会って議論することが当然の道理」と強調し、尹大使の過去の発言と相反する意見を明らかにした。
ただ、これは次期大使が自論を述べているだけで、韓国政府の方針に反映される可能性は薄いだろう。日本としては話が通じる人物が大使になる程度にとらえていた方がいい。(もっとうがった見方をすれば、日本に1円も出させないことで日本に貸しを作ったと考えているかもしれない)
尹氏は「財団を作るのに日本から一切1ウォンも受け取ってはならないと考える」と述べるのなら、その理由をしっかり韓国国内に浸透させてほしい。最も述べたところで重要なところを韓国のマスコミが報じなければ話にならないのだが。
ただ、大法院判決を尊重するのなら日本企業は損害賠償を支払うことになる。これはこれで仕方なしと考えて、今後発生する徴用工訴訟について財団で対処するということなのだろうか。もし、今回の件で財団がいわゆる被害者に補償するというのなら、大法院判決を尊重することにならないのだが、その辺の矛盾に対してはどう考えているのだろうか。
尹氏は日本のマスコミでも「知日派」「親日派」として紹介されているが、ダイヤモンドオンラインは次のように指摘している。
● 日韓関係悪化は日本のせい?
物議を醸した尹徳敏氏の発言は、5月26日に東京の帝国ホテルで開かれた国際交流会議「アジアの未来」の場で出たものだ。彼はこの会議にオンラインで出席し、約30分講演している。
慰安婦問題について話題になった際、彼は「責任のある日本側が、『カネですべての問題を解決した』というような発言をしたことから、世論が大きく悪化して状況が変わった」と、日韓関係悪化を日本のせいにした。謝罪と補償の両方が解決のためには必要なのに、日本側は補償金を払ったのだから問題は解決しただろう、という態度だというのだ。
さらに徴用工問題については、「強制徴用現金化問題に対し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が現金化は望まないとの発言をしたが、尹錫悦政府はどのように見ているか」という質問に対し、「ここ数年、さまざまな解決案が出てきたが、実行しなかっただけ」と、徴用工問題が解決に向かっているかのような発言もした。
確かに、韓国側で救済案がいくつか出ていたことはメディアでも報じられた。2019年にはこれが日本政府にも提示され、救済案を提示する南官杓(ナム・グァンピョ)元駐日大使の発言を遮って「韓国側の提案はまったく受け入れられるものではない、と以前に韓国側に伝えている。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」と、怒りを露わにした河野太郎元外相の姿が話題になったほどだ。
解決案が出ていたというのは韓国内だけの話で、日本が納得できる案など一つもなかった。だから「実行しなかった」ではなく、正しくは「実行できなかった」のはずだ。
そうなると、今回の発言もどこまでが真意か疑ってかからなければいけない。