中国流出のシャインマスカット、栽培面積は日本の30倍で損失100億円と農水省試算
中国に苗が持ち出されたとみられる高級ブドウの「シャインマスカット」。栽培面積は日本の30倍ほどともいわれ、農林水産省が試算したところ、100億円の損失が発生しているようだ。中国の市場だけでなく、東南アジアの市場にも中国のシャインマスカットが出回っている。そして、韓国も中国に流出した苗を手に入れ韓国内で栽培している。
シャインマスカットの開発期間は33年と言われていて、その苦労が一瞬で奪われ海外市場を席巻しているのだ。
シャインマスカットの他にも中国や韓国にイチゴやリンゴやかんきつ類が流出している。もちろんそれらの品種もシャインマスカットと同様に苦労して開発された品種だ。種苗法が改正され育成者権者の意思に応じて海外流出防止等ができるようにするための措置が取られたが後の祭りだったようだ。今後現れるであろう新品種は守られるかもしれないが。
ブドウ「シャインマスカット」の中国への無断流出によって、品種育成者が得られるはずの許諾料換算で、少なくとも年間100億円の損失が発生しているとの試算を農水省がまとめた。中国の生産者が種苗を正規に購入し、現地で栽培されたと仮定して試算した。同省は、こうした品種流出による経済損失の防止へ、品種の育成者権を管理・保護する専門機関の設立を検討する。
「シャインマスカット」は農研機構が育成した品種。2021年4月の種苗法改正で、農作物の新品種に海外への持ち出し制限を付けられるようになったが同品種は改正前の16年ごろから無断で海外に流出。中国では栽培面積が急拡大し、20年に少なくとも5万3000ヘクタール、日本の栽培面積(19年に1840ヘクタール)の29倍に相当する。
中国国内のブドウ全体の面積に占める同品種の割合から推計した生産量に、同品種の市場出荷価格(1キロ当たり340円)を乗じ、出荷額を計算。許諾料を出荷額の3%と仮定し、許諾契約ベースの損失額を試算した。
育成者権の管理・保護機関検討へ
政府は20日に改訂した輸出拡大に向けた実行戦略に「育成者権管理機関」の設立検討を明記した。品種の育成者に代わって専任で知的財産権を管理・保護する役割を担う。同省は、開発者ごとに行っていた監視などをまとめることで「違法事例の発見も効率化できる」(種苗室)とみる。フランスの専門機関を参考に具体化の検討を進める。フランスの機関は国内外の4400品種を管理し、年間100億円程度の許諾料収入を得ている。
100億円というのは中国に流出したシャインマスカットだけの数字だ。これに韓国の数字とイチゴやリンゴの数字を加えるととんでもない数字になる。しかも、イチゴはさらに悲惨な状況らしい。
中国での日本品種の栽培は、私たちの想像を絶する規模で行われていた。
日本の農林水産・食品産業技術振興協会によれば、シャインマスカットは中国における総栽培面積の10%に相当する5万3000ヘクタールで栽培。また「紅ほっぺ」については、総栽培面積の25%に相当する4万4000ヘクタールで栽培されているという。
気がつけば中国は、世界最大のイチゴ生産国である。
北京知研諮詢など中国の複数の調査会社が報じるところによると、2020年、中国のイチゴの栽培面積は131億ヘクタール、生産量は345万トン。世界の生産量に対し、すでに4割近いシェアを占める。中国は輸出も手掛けており、2014年に1291トンだった輸出量は2020年には5815トンとわずか6年で4.5倍になったという。ちなみに、最大の輸出先は日本(輸出量の20%)であり、主に冷凍食品やジャムとして中国産のイチゴが流通している。
中国に流出したイチゴの最大の輸入国が日本だということだ。こんな情けない話はない。
日経新聞は「防疫上の理由で本来は中国に輸出できないはずだが、2016年以降、無断で持ち出されたとみられ、栽培面積は20年時点の推定値で日本の30倍もあるという」と指摘。
農林水産省は高級ブドウ「#シャインマスカット」の #中国への #無断流出 で #年100億円以上 の #損失 が生じているとの試算をまとめました。防疫上の理由で中国に輸出できないはずですが、無断で持ち出されたとみられ、#栽培面積 は推定値で #日本の30倍 もあるといいます。https://t.co/LQTqAn7mkd
— 渋谷高弘(日本経済新聞) (@shibuya_nikkei) July 6, 2022
「無断で持ち出されたとみられ」ではなく、盗まれたのは明らかだ。
タレントのフィフィ氏は「日本は安全保障上の危機感、認識が甘い」と指摘。
⬜️シャインマスカットの中国流出、年100億円の損失と農水省試算https://t.co/2a38Av1AXs
これ、日本の知的財産に対する保護が甘かったという理由も…今は海外流出対策も強化されたらしいけど、日本は技術にしても、国家の機密情報にしても安全保障上の危機感、認識が甘いよね。スパイ防止法もないし…
— フィフィ (@FIFI_Egypt) July 6, 2022
吉田康一郎元都議は「米国は被害相当額の報復関税を課す」と投稿。
米国は、類似の事態に於いて、被害相当額の報復関税を課すんですよね。
シャインマスカットの中国流出、年100億円の損失と農水省試算 2022.7.6 日本経済新聞https://t.co/q2F55yrl0b
— 吉田康一郎 (@yoshidakoichiro) July 6, 2022
はっきりってこれは農林水産省をはじめとする政府の怠慢だった。そして、これを見て種苗法改正に反対してきた方々は何を思うだろうか。数十年の農家や関係者の苦労が一瞬で奪われ、さらにそれが日本に逆輸入されるという事態に何とも思わないのだろうか。
最近では収穫間近の桃やメロンが盗まれて農家が落胆するニュースが頻発しているが、これも同じく、しっかりと国は農家を守ってほしい。