最凶ヒグマを退治しようと戦う住民に、動物愛護団体などが「かわいそう、殺すな、動物虐待だ」と抗議⇒地元住民「ここに住んでみるか」「農家の被害を補償してくれるのか」
北海道で、恐ろしくも賢いヒグマが酪農家を悩ませているという。
65頭もの乳牛を殺傷しているそうで、深刻な被害に悩む地元民が退治をしようするも、動物愛護団体などが立ちはだかったという。
コードネーム「OSO(オソ)18」、別の名を「忍者グマ」と呼ばれる最凶ヒグマをご存じか。3年前に北海道で発見されて以降、65頭もの乳牛を殺傷しているシリアルキラーだ。神出鬼没で酪農などへの被害も深刻。なんとか退治しようと闘う地元民の前に立ちはだかるのは、意外にも同じ“人間”たちだった。北の大地で今、何が起きているのか。その実態に迫る現地ルポである。
中略
地元のハンターたちの集まりである北海道猟友会標茶支部の本多耕平・副支部長(76)に聞くと、
「恐ろしくOSOは頭が良くて、日中はまず姿を見せません。なるべく痕跡を残さないよう河原ではなく川の中を歩いたり、舗装道路に足跡をつけないように橋の下を迂回(うかい)したりして、ハンターの我々にとっても難敵。それらしきクマが無人カメラに映るのも夜中の22時から午前2時くらいまでの真夜中なんですが、法律で日没から日の出までハンターは銃を撃てない決まりになっています。銃器で倒すのは本当に厳しい」
追い打ちをかけるように熊撃ちのプロたちを悩ますのが、主に北海道外の人たちによる“抗議の嵐”だ。
猟友会同支部の後藤勲・支部長(78)が明かすには、
「地元の人たちは“襲われる前に鉄砲で撃って下さい”と言うけど、本州の動物愛護や自然保護の団体が“かわいそう”“殺すな”“動物虐待だ”と抗議してきて、ハンターたちは板挟みです。国や道など行政も、檻を設置してOSOを獲ってくださいとは言うけど、それ以外のクマを捕獲したら、できるだけ山に放してくれと。保護団体に配慮し、バカげた話がまかり通っているんです」
酪農家にとっては死活問題であり、いつ人間が襲われるか分かったものではない。何らかのきっかけで住民が襲われ、人間の味を覚えてしまうと、ヒグマは再び人間を襲うといわれている。地元住民にとっては恐怖の対象でしかない。
これまでに数千万円の被害が出ているようで、地元住民も抗議する人らに向けて「ここに住んでみるか」「農家の被害を補償してくれるのか」と訴える。
これを取り上げた新潮も「それでもクマの命の方が大事だと声高に叫ぶ人々は、是非とも標茶の町へ足を運ぶことをお勧めしたい」と綴った。
「ここに住んでみるかい」
先の本多副支部長も、「愛護団体の抗議は本当に多くて、標茶の役場の電話が鳴りやまないそうなんです。我々ハンターだって、むやみやたらにクマを見つけたら撃つ、なんでも殺せばいいと考えているわけではなく、人命にかかわることなので、しっかり頭数を管理しないといけないと思っているのです。クマの頭数が増えて、今のようにそこら中にいる状況になったのは、かつて道内でも保護の動きがあって、三十数年前に『春クマ駆除』が禁止されて以降のことですから」
再び後藤支部長に聞くと、
「これだけの被害があって大騒ぎしているのに、まだ捕ったらダメだというなら、苦しんでいる農家のことを考えてもらわないといけない。このまま放置したらどうなる。じゃあ、抗議する人らはここに住んでみるかいと。農家の被害を補償してくれるのかと言いたいです」
数千万円の損害が
いったい地元の被害はいかほどなのか。そこで標茶町役場農林課に尋ねると、「21年までの農家さんの被害ですが、牛の死亡や治療などにかかる費用から算出した額は約1900万円。牛を放牧中、被害があったため中止した場合に発生した牛の飼料購入費については約2千万円(想定額)となります。その他にも損害が発生しているかもしれませんが、町で算出しているのは以上です」
最後に、冒頭で話した第一発見者の高橋さんは、
「本当は自然の中で育てるのが一番なのに、襲われた当日から仕方なく放牧はやめています。ずっと牛舎に閉じ込めっぱなしなんですが、そうなると足腰が弱くなって、乳牛として長く使えない。収入が何百万円も違ってくるので、本当に大変です……」
それでもクマの命の方が大事だと声高に叫ぶ人々は、是非とも標茶の町へ足を運ぶことをお勧めしたい。
抗議している人らは、人が襲われるまで手を出すなとでも言いたいのだろうか?命の大切さを訴える動物愛護の精神は尊重するが、何でもかんでもというのは違うのではないだろうか。
「かわいそうだからクマを殺すな。酪農家は我慢しろ」というのなら、抗議している人らはクラウドファンディングでも立ち上げて、酪農家を支えるくらいの行動をしなければ、あまりにも無責任だと私は思う。それでも地元住民が命の危険を感じながら暮らしていかなくてはならないのは変わりないが。
確かに動物が住む自然界を切り開いたのは我々人間だが、少なくとも、我々はその先人の開拓の努力にあやかっている。我々が口にする牛乳や乳製品などは酪農家あってのものだ。乳製品を食す一方で、このヒグマの退治について抗議をしているものがいるとしたら、私は軽蔑しかしない。
私はビーガンだと主張する人もいるかもしれないが、その野菜だって害獣の被害で農家は悩まされているのだ。
次の参考資料をご覧にいただければヒグマがどれだけ恐ろしいか理解していただけると思う。
札幌丘珠事件
三毛別羆事件
石狩沼田幌新事件
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件