ハリス米副大統領が、フィリピンのパラワン島に訪問へ。南シナ海で実効支配を強める中国へのけん制か
ハリス米副大統領が、フィリピンのパラワン島に訪問すると報じられた。目的は、南シナ海で実効支配を強める中国へのけん制とされている。
米政府は15日、ハリス副大統領が22日、南シナ海にあるフィリピンのパラワン島を訪問すると明らかにした。南シナ海で実効支配を強める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。
パラワン島は、中国が人工島を建設し、軍事拠点化を進めてきた南沙(スプラトリー)諸島に近い。米政府高官はハリス氏の訪問について「バイデン政権がフィリピンを支援し、南シナ海におけるルールに基づく国際的な海洋秩序を維持することへのコミットメント(関与)を示すものだ」と記者団に説明した。
高官によると、ハリス氏によるパラワン島訪問は米政府として最高位の高官の訪問となり、「歴史的な訪問だ」としている。ハリス氏は南シナ海における航行の自由や、違法漁業についても協議するという。
ハリス氏は18~19日にタイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席した後、フィリピンを訪れてマルコス大統領らと会談し、安全保障や経済面での協力の強化を協議する予定だ。
ハリス副大統領は、安倍普三元総理の国葬儀に参列するため日本を訪問した際に、9月26日には岸田文雄総理と会談し、台湾海峡での中国の行動を非難し、28日には米海軍横須賀基地で演説し、中国を念頭に「いかなる一方的な現状変更にも反対し続ける。われわれの長年の方針に基づき、台湾の自衛を引き続き支援する」とも明言した。また「台湾はテクノロジーやヘルス関連だけでなく、それ以外の分野でも世界の利益に貢献する活気に満ちた民主主義国家だ。米国は今後も、非公式な関係を深めるだろう」として、米台関係を強化していく意向を表明した。(参考)
また、ハリス副大統領は8月のアジア歴訪中にもシンガポールで、南シナ海における中国の威圧行動を非難した。
アジア歴訪中のカマラ・ハリス米副大統領は23日、アジア歴訪の最初の訪問地シンガポールで、南シナ海における中国の威圧行動を非難した。南シナ海の領有権をめぐる中国と周辺諸国の対立は、ここ数年アジアで不安定要因のひとつになっている。
ハリス副大統領は、アメリカが「脅威を前にした同盟諸国を支える」と表明した。
ハリス氏はさらに、アフガニスタン情勢についても触れ、米軍撤収の判断は「勇気ある、正しい」ものだったと強調した。
ハリス氏のアジア歴訪は、アメリカ政府のアジア重視姿勢をあらためて打ち出すためのものとみられている。
ハリス氏は中国について、「威圧と脅迫」によって「南シナ海の大部分に関する領有権主張を続けている」と非難した。
副大統領はその上で、「こうした違法な主張は、2016年に(オランダ・ハーグの)仲裁裁判所がすでに否定している。中国の行動は依然として、規則に基づく秩序を損ない、国の主権を脅かすものだ」と批判した。
おそらく、今回のフィリピン訪問も中国への批判を強めるだろう。中国が影響力を拡大しつつある地域への訪問は非常に効果があると考える。当然中国は反発するだろう。
日本政府も「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、東南アジアや南西アジアで経済性や持続可能性に優れた質の高いインフラ整備を重点的に支援するなど、6月にインフラ輸出の新たな戦略を決定している。
日米で東南アジアにおける中国の影響力をそぎ落とし、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け連携していってほしい。