クレバリー英外相、安保理常任理事国を拡大し、日本を加えることを支持すると表明⇒その前に国連憲章改正手続きを
イギリスのクレバリー外相が、安全保障理事会常任理事国を拡大し、日本を加えることを支持すると表明した。
現在、５か国が常任理事国なのだが、ロシアのウクライナ侵攻を巡り、非難決議案をだしても、中国ロシアが反対や拒否権を乱発しているためことごとく否決されている。５月には北朝鮮による大陸間弾道ミサイル（ＩＣＢＭ）発射を受け対北朝鮮制裁を強化する決議案を採決したが、これも中国ロシアが拒否権を行使して否決された。
こういった中、国連の機能不全も指摘され、クレバリー外相は国連安保理改革の一環として常任理事国の拡大を主張したと見られる。日本の他にもブラジル、インド、ドイツ、アフリカの代表を挙げていた。
クレバリー英外相は12日、ロンドンで政府の長期的な外交方針を示す基調演説を行った。
この中で、国連改革の必要性に触れ、安全保障理事会常任理事国を拡大し、日本を加えることを支持すると表明した。
ロシアのウクライナ侵攻などを巡って機能不全が指摘される安保理に関し、外相は「（現状の）全てが完全だとは信じていない。改革を妨げる意図もない」と改革推進を約束。その上で「ブラジル、インド、日本とドイツを、アフリカの代表と共に常任理事国として迎えるよう希望する」と述べた。
５月２３日の日米首脳会談では、安全保障理事会を含む国連の改革と強化の必要性で一致し、その際にバイデン大統領は国連安保理改革が実現した場合、日本が常任理事国に入ることに支持を表明した。
クレバリー外相はさらに具体的な案を明かしたわけだが、国連安保理改革が望まれる中、こういった具体的な案を提起したことは良いことだ。日本を支持してくれることには歓迎したいが、その前に旧敵国条項を何とかしてもらわないといけない。バイデン大統領が発言した際にもその点は指摘された。
旧敵国条項とは、第二次世界大戦の敗戦国の軍事的行動を縛る条項。侵略行為などの軍事的行動をさせないためのもので、日本・ドイツ・イタリアは現在も国連憲章で「敵国」と規定されている。
１９９１年、イタリアは国連総会において、敵国条項の削除を含む国連制度の改革を求め、１９９５年の国連総会では日本がドイツと共に旧敵国条項を憲章から削除する決議案を提出し、賛成多数によって採択され、さらに「時代遅れ」と明記され、事実上死文化している。しかし、実際に削除されるためには、国連憲章の改正手続が必要なのだが、今現在に至ってもこの手続きはされていない。
国連憲章改正が出来ていないのは、中国ロシアの反対が想定されているからだと見られている。日本を支持してくれるのなら、まずは米英が中心となって国連憲章改正手続きを推進してもらわないと何も前に進まない。
当然日本も削除を求め続けなければいけないのだが、このような時代遅れの旧敵国条項も変えられないようでは安保理改革は夢のまた夢だろう。