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WHO、一律の渡航禁止に反対 「根拠に基づいたリスクベースのアプローチ」を適用すべき




新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」を巡り、各国が渡航禁止などの水際対策を強化するなか、WHOのテドロス事務局長が「この株を検出した南アフリカとボツワナは感謝されるべきであり、罰せられるべきではない」(参考)ととんでもない発言を述べたが、WHOとしても一律の渡航禁止に反対する見解を表明した。

世界保健機関(WHO)は30日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」出現に端を発した渡航制限を巡り、全渡航者に対し「根拠に基づいたリスクベースのアプローチ」を適用すべきとの見解を表明した。

対策としては、「渡航前や到着時の乗客のスクリーニング、リスク評価を行った上での渡航者に対する新型コロナ検査の実施または隔離などが考えられる」と指摘。全ての措置はリスクに見合ったものでなくてはならず、期限を設け、旅行者の権利を尊重して適用すべきだとした。

その上で「一律の渡航禁止では国際的な感染拡大を防ぐことはできず、人命や生活に大きな負担をかけることになる」と述べた。

28日現在、約56カ国が水際対策を目的とした渡航禁止措置を実施している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0ffc98ffa14406613556fe7779633bdc2a0606e3

専門家は次のような意見を述べている。(参考

病院長補佐/教授/感染症専門医
WHOの推奨に強制力は当然ありません。今の世界状況からウイルスの性質が判明するまで各国の対応はやむおえないと思います。ただ心配するのは今後も新しい変異株が見つかった場合、南アと同じ被害を恐れ、報告を躊躇する国が出てくるでしょう。感染対策は速やかな発見と対処が重要ですので、むしろWHOは変異株の監視体制とその報告体制、そして被害を受けた南アのような国家の公衆衛生支援を優先するとありがたいですね。根拠に基づく対応は大切ですが、まだその根拠が出揃っていません。仮にオミクロン株が重症化リスクに対してワクチン効果が下がらないなど根拠が揃って緩和するのが妥当と思います。
日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター所長

結局のところ、正確な情報がないことが各国で一律の渡航禁止になっている理由です。先行き不透明感があるところでは、人々が過度に保守的になることは実験経済学や心理学でも示されています。まずはWHOが感染力、重症度についてきちんと整理して、正確な情報を出すことが先決です。WHOが提唱するリスクベースで行動するためには、結局数値化された正確な情報が必要ですので、是非ともWHOは各国から情報を集め、適宜発信して欲しいと思います。

両者とも、科学的根拠を示したうえで渡航制限の緩和を呼びかけよと述べている。まったくその通りだ。

そして、一番違和感を感じたのが「一律の渡航禁止では国際的な感染拡大を防ぐことはできず、人命や生活に大きな負担をかけることになる」の部分だ。

これは「どうせ水際対策を強化したからといって完全に防げるわけではないのだから、無駄な渡航制限はやめるべき」とも読み取れる。

国として国民の健康を守ろうとする措置への冒涜であり、ありえない。もろにテドロス氏の意見が反映されているようだ。

冒頭で「この株を検出した南アフリカとボツワナは感謝されるべきであり、罰せられるべきではない」というテドロス氏の発言を紹介したが、米国も「この株を検出した南アフリカとボツワナは感謝されるべき」という部分にだけ同じ意見を表明している。

米国務省の声明は、「ブリンケン長官は特に、オミクロン株を迅速に特定した南アフリカの科学者と、その情報を共有した南ア政府の透明性を称賛した」とし、世界はこれを模範とすべきだと述べている。

https://www.afpbb.com/articles/-/3377994

米国の表明は、新型コロナ調査に非協力な姿勢を見せる中国政府への皮肉だ。そして、南アの透明性は称賛されるべきだが、それと渡航禁止措置はまた別の話しである。渡航制限によって南アフリカの国民に不自由が生じ、生活に大きな負担がかかるのなら、国際組織が先頭に立って救済にあたるべきではないか。これでは国連やWHOがすべき仕事を放棄し、各国に負担を押し付けているのと変わりないと感じる。







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